『初恋の悪魔』を観終えて残った寂しさ 私たちが坂元裕二作品を追いかける理由

 坂元裕二脚本の刑事ドラマ『初恋の悪魔』(日本テレビ系)が、最終回を迎えた。

 馬淵悠日(仲野太賀)、鹿浜鈴之介(林遣都)、小鳥琉夏(柄本佑)、摘木星砂(松岡茉優)たち4人の警察関係者が捜査権のない事件を独自に捜査する物語としてはじまった本作は、やがて、連続少年刺殺事件にたどり着く。

 境川警察署の署長・雪松鳴人(伊藤英明)の息子・弓弦(菅生新樹)の証言を聞いた4人は、雪松署長が犯人であることを確信。悠日と鹿浜は雪松の逮捕に向かう。しかし、小鳥からの着信を見た悠日と鹿浜は、嫌な予感がして、小鳥たちのいる鹿浜の家へと戻る。摘木と小鳥、そして森園真澄(安田顕)は、生死不明の状態で、2階の部屋に監禁されていた。

 家に戻った悠日と鹿浜に対して摘木と小鳥は病院に行ったと言う弓弦。だが、玄関には血痕があり、森園のスマホが玄関に落ちていたことから、2人は弓弦のことを疑い出す。正体を知られた弓弦はハサミで鹿浜の手を斬りつけると、2階に立て籠もり父にスマホのメッセージアプリで助けを求める。悠日が弓弦を説得する中、鹿浜の家に雪松が現れる。

 雪松の証言から、少年連続刺殺事件の犯人は弓弦で、彼は息子を守るために、殺人を隠蔽していたことが判明する。自分が罪を被って死刑になるから息子を見逃してほしいと鹿浜に取引を持ちかける雪松。鹿浜と雪松が真剣に話している間、雪松のスマホは弓弦からのメッセージを受信し続ける。その度に、間の抜けた受信音が鳴るのだが、緊迫した場面とミスマッチで違和感が大きい。 

 これはなにかの冗談か? と困惑したが、おそらく、SNSでつぶやいたり、LINE等のメッセージアプリで友達と他愛のないやりとりをしながら、ダラダラと「ながら見」している視聴者と弓弦の姿を重ねているのだろう。

 SNSを通して劇中で描かれた殺人事件の「犯人探し」をゲーム的に楽しむことが「考察ドラマ」の本質だ。鹿浜たち4人が事件について考察する姿をドラマの中で描くことで「考察ドラマが盛り上がっている状況」を比喩的に描いたのが『初恋の悪魔』の批評性だったが、ドラマの盛り上がりを削ぐかのように間抜けな受信音が連続して流れている場面は、スマホとSNSが普及した後のテレビドラマと視聴者の関係を批評的に描いているように見える。

 摘木、小鳥、森園の3人が、すでに殺されているかもしれないと考えた鹿浜は「悪魔を殺せるのは悪魔だけだ」と悠日に言い、ハサミを手に取り、弓弦に立ち向かう。3人が生きていたことを悠日が知らせたことで、鹿浜は思いとどまり、ハサミを捨て、手錠に持ち替える、もしも3人が死んでいたら、鹿浜は弓弦を殺し、悪魔になっていたのかもしれない。

 事件の真相はその後、ニュースであっさりと語られ、雪松署長が悠日の兄・馬淵朝陽(毎熊克哉)を殺したことも判明する。これまで自宅捜査会議で考察してきた事件と同じように、雪松親子の内面を語る必要はないというのが、坂元裕二の考えなのだろう。

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