『DC がんばれ!スーパーペット』が描く、“真のヒーローとは何なのか”という大きなテーマ

 『LEGO(R) ムービー』(2014年)、『レゴバットマン ザ・ムービー』(2017年)、そして実写映画『トムとジェリー』(2021年)など、数々の作品の映画化権を活かした斬新な企画で劇場作品を手がけてきた、ワーナー・アニメーション・グループ。その製作による本作『DC がんばれ!スーパーペット』もまた、これまでの例に漏れない一作だ。

 日本では予告や広告などで、本作がかわいいペットたちが大活躍するキッズ作品としての面が強調されている。もちろんそれも間違いではないが、大人にも楽しめたり、もしくは大人の方が楽しんでしまえる内容である場合が多いアメリカの劇場アニメーション大作のなかで、本作は、DCヒーロー作品のファンがとくにエンジョイできるものとなっている。

 それもそのはずだ。本作の脚本家は、『レゴバットマン ザ・ムービー』を手がけた、ジャレッド・スターンとジョン・ウィッティントンなのだ。「『レゴバットマン ザ・ムービー』は驚きの映画だ! 批評的視点を獲得した、レゴ映画のカオス」でも書いたように、この作品はバットマンというヒーローを、実写映画と同じか、それ以上のレベルで掘り下げ、大人の観客をも深く考えさせる奥行きを持っていた。つまり、歴代のバットマン映画とも堂々並ぶことのできるものだった。

 本作『DC がんばれ!スーパーペット』では、スーパーマンやバットマン以外にも、DCヒーローのチーム「ジャスティス・リーグ」の面々が登場するとともに、スーパーパワーを持ったペットたちが派手なアクションを披露している。とくにそんなスーパーペットに焦点が当たる内容だけあり、本家ヒーローチームの情けなさが浮き彫りになるなど、実写映画『ジャスティス・リーグ』(2017年)よりも、ある意味“毒”を含んだユーモアが含まれているのだ。そして、“真のヒーローとは何なのか”という、大きなテーマも用意されている。

 本作の企画は、おそらくアニメーションスタジオ「イルミネーション」の『ペット』シリーズの成功を受けたものなのではないか。だから一見、本作はそんなペットの活躍とヒーロージャンルをわざわざ新たに合体させたかのように感じられるかもしれない。しかし、様々なヒーローのかたちを描いてきたアメリカンコミックの歴史は奥深い。DCコミックスでは1950年代よりスーパーマンの愛犬クリプトが登場し、1960年代に「リージョン・オブ・スーパーペッツ」としてペットたちのヒーローチームが結成され、さらに2011年からそれを発展させた、かわいい絵柄の「DC スーパーペッツ」が現れているのだ。スーパーペッツは、すでに既存のアニメ作品にも登場している。本作は、それらを原案としているのである。

 序盤で見られる、ジャスティス・リーグが活躍するシーンは、非常にエキサイティングだ。スーパーマンの宿敵である、悪の大富豪レックス・ルーサーの陰謀を、ワンダーウーマンやアクアマンなど、有名ヒーローたちが次々に現れて阻止していく流れは、これまでのDCヒーロー作品のアクションシーンのなかでも完成度が高く、その歌舞伎のような華のある演出に痺れてしまう。やはり「ジャスティス・リーグ」という題材は、コミック的な分かりやすい描き方にフィットしていると思えた瞬間である。

 しかし、そんな活躍も束の間。ジャスティス・リーグはスーパーパワーを宿したモルモット軍団に敗れ、全員が囚われの身となってしまう。普段はかっこいいヒーローたちがモルモットにケージに入れられ、逆にモルモット扱いされる場面はユーモラスながら、『猿の惑星』シリーズがそうであるように、かなりショッキングだ。ここまで情けないヒーローの姿が、かつてあっただろうか。

 そこで、代わりに悪のモルモット軍団に立ち向かうのが、スーパマンの愛犬クリプトを中心に、スーパーパワーを得た犬、ブタ、亀、リスのヒーローチーム。飼い主に見捨てられたり、野良となって施設に捕獲されていた動物たちが、世界を救うために力を合わせるのである。

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