『サバカン SABAKAN』インタビュー

草彅剛が語る“好奇心を忘れないことの大切さ” 少年時代を振り返って「“子供返り”した」

 8月19日より映画『サバカン SABAKAN』が公開される。本作は、1986年の長崎を舞台に、クラスで人気者の久田(番家一路)と嫌われ者の竹本(原田琥之佑)の2人が、“イルカを見るため”に冒険に出る青春物語。2人の少年の友情、それぞれの家族との愛情の日々を描く。物語は大人になった久田が少年時代を回想するナレーションをベースに進むが、その役を担当するのが草彅剛。声のみの演技をすることも多い草彅だが、本作ではどういったことを意識して収録に臨んだのか。幻のラジオドラマバージョン収録時の話や、少年時代の思い出のエピソードについて、話を聞いた。

「これから自分の物語がまた始まるんじゃないかな」

ーー本作のナレーションをメインに担当されていましたが、収録は映像を観てから行ったのですか?

草彅剛(以下、草彅):そうです。金沢(知樹)監督が「ここで切ってほしい」「静かな感じで読んでほしい」など、細かく指導してくれました。

ーー映画を拝見して、あえて抑揚を大きくつけないというか、感情を込めすぎないことを意識されているのかなと感じました。

草彅:あんまり速すぎても遅すぎてもよくないので、“普通に”やりましたね。感情はあまり入れていないのですが、ストーリーを追ってる感じなのでむしろそれがいいのかなと。

ーー普段されているナレーションのお仕事と同じ感じですか?

草彅:同じです。ナレーションは噛まなければ大丈夫です(笑)。自分の喋ってる声と聞いてる声は違うのでわからないんですが、よく「いい声だ」と言われます(笑)。そう言ってもらえるのは嬉しいですよね。

ーー草彅さんが演じる大人になった久田は、自分自身の人生を振り返っていきます。実際に映像を観た上で、ご自身と役が重なる部分はありましたか?

草彅:いや、特になかったかな。撮影も終わった後ですし。ただ、オーディションをして金沢監督が僕に役をつけてくれているので、そういった解釈的な部分は監督に全て任せてました。だから子役の2人(番家一路、原田琥之佑)にも撮影ではほぼ会ってないんですよね。

ーー撮影現場には草彅さんが後から入った形になるんですかね?

草彅:そうですね、実は僕の撮影期間は本当に短かったんです。僕が入る1カ月以上前からみんな長崎で一緒で、すでにチームワークが出来上がっていました。みんないい人で、家族みたいな感じで、すぐに馴染めました。ロケ現場には監督の友達の人がいたり、監督以外のスタッフも番家くんと原田くんに演出していたりして、手作り感のある、みんなで作った映画になったかな。そうやって監督が演技経験の少ない2人のいいところを撮っていた気がします。

ーー正直、最初に本作の情報を知った時はついつい草彅さんが主演のように考えてしまっていて、登場シーンが少ないことに驚きました。

草彅:そうですよね(笑)。実は『サバカン SABAKAN』は元々ラジオドラマで、僕が全部読んだんですよ。久ちゃん(久田)とか竹ちゃん(竹本)のセリフとかも。そのときはすごく感動して、泣きながらブースでセリフを言えなくなって、「監督、ちょっと待ってください」と言ってしまうほどで。結局、その作品は世に出ることはなかったんですが、映画化されるにあたって今回の僕の役が登場したんですね。

ーーそんな経緯があったんですね。そうなると草彅さんは登場人物全員の気持ちを理解していらっしゃったと。

草彅:ラジオドラマではト書きが多かったです。でも、たとえば真千子ちゃん(尾野真千子、母親・久田良子役)と竹原さん(竹原ピストル、父親・久田広重役)の家族のところでちゃぶ台を囲むシーンはセリフがアドリブだったりするので、やっぱりこれはラジオドラマじゃなくて映像にするべきものだったんだなって思いました。2人の演技がとても素晴らしかった。ああいうお父さんとかお母さんとか、家族ってすごいなあと思って。なので、結果的にとてもいい作品になったと感じています。

ーー本作を観たとき、経験していない時代の話なのにとても懐かしい感覚を覚えました。

草彅:そうですよね。子役の2人は当時のこととか全然知らないで演じていますけど、そのときの雰囲気を出してますし。そう考えると時代って面白いですね。

ーー草彅さんは本作を通して、懐かしさを感じましたか?

草彅:感じました。学校の教室なんてそのままそうだったなって思うほどです。久ちゃんが本作で経験しているのと同じように、僕自身も自転車で隣街に行ったりしたひと夏の冒険のような経験が今の基盤になっているなと。こういう経験をしているということがすごく誇らしいです。『サバカン SABAKAN』を観て、改めてそういう気持ちを思い出しましたし、大事だなって思いました。この映画を観てから“子供がえり”したというか、もう毎日が楽しくて元気で。いま48歳ですが、まだまだなんでも楽しめる子供のようにいたいです。自由に自転車に乗って風を切るだけで楽しかった感覚とか、そういうものが大事ですよね。気持ちも新たに、これから自分の物語がまた始まるんじゃないかなと感じています。

ーー実際、この久ちゃんに似てるところはありますか?

草彅:自転車が好きだったところは似てますね。あと、あそこにお化けがいるらしいから見に行こうぜ、とか、そういう好奇心旺盛なところが似てるかな。

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