オダギリジョーに聞く、役の広げ方 「作品にとってどうあるべきか」

オダギリジョーが脚本を書くとき

ーー本作は母親という社会から拒まれた主人公が施設という社会を拒み、のちに母を拒みます。そんな彼が同じく社会を拒み拒まれたホームレス、そして自分の家庭環境という社会を拒む女子高生と邂逅するのが印象的でした。社会的な問題を扱った映画でもありますが、本作のテーマについてどう考えますか?

オダギリジョー:僕も本を書くときに、やはり自分に引っ張られることが多いんです。自分の経験だったり、考え方だったり、登場人物それぞれにどこか自分を反映して書いてしまうんですよね。全てのキャラクターじゃないにしても、いろいろと自分の内面が出てしまうものだと思うんです。本作も松本監督の書いたオリジナルの脚本だし、同じ状況ではないにしろ、監督が色々と社会に対して思ったり感じたりすることが詰まっているんだろうなとは思いますよね。そういう個人的なものを感じたというか、監督の内面を垣間見られたような気がして、すごく「私的」な映画に感じましたね。

ーー役を演じる上では、そういった自分自身が反映されると感じることはありますか?

オダギリジョー:「演じる」という、自分の肉体を使う表現という意味では大いにありますが、「人物を作りあげる」という意味ではどうでしょうね。作品全体を通して、本作で言えば優太を軸にしてどういう人たちがどう絡んで、どうストーリーが転んでいくか考えるので、あまり自分の私生活から引っ張ってくることはないかもしれないです。その作品にとってどうあるべきかというか、どう関わっていけば面白くなるかとか、どういうことを優太が感じればもっと作品が深くなるかとか、そういうことから役を広げていくタイプかもしれないですね。

――最後に、本作を劇場に観にいく観客に向けてメッセージをお願いします。

オダギリジョー:コロナで映画館に行く機会が僕も減ってしまいましたが、やはり映画館で映画を観ることって素敵な経験なんですよ。配信が増えたことで、パソコンや携帯で手軽に映画を観ることも増えたかもしれませんが、それはやっぱり全く別の経験です。僕も作品を作る時には、劇場のスクリーンで観ることを想定したカット割りで画を作りますし、音は特に劇場のサウンドシステムでの設定にしてあるので、パソコンや携帯では全ての音が出ません。家のテレビでもかなりボリュームを上げないと聞きとれない音があります。作者の意図や作品の本質を受け取るなら、劇場で観ることをオススメします。本作も、劇場で観るからこそ心に届くものがあると感じる作品ですので、劇場で特別な時間をお過ごしください。

■公開情報
『ぜんぶ、ボクのせい』
新宿武蔵野館ほかにて公開中
出演:白鳥晴都、川島鈴遥、松本まりか、若葉竜也、仲野太賀、片岡礼子、木竜麻生、駿河太郎、オダギリジョー
監督・脚本:松本優作
製作・プロデューサー:甲斐真樹
製作:スタイルジャム、クロックワークス、ビターズ・エンド、グラスゴー15、ミッドシップ、コンテンツ・ポテンシャル
制作プロダクション:スタイルジャム
配給:ビターズ・エンド
2022年/121分/カラー/日本/5.1ch/ビスタ
(c)2022『ぜんぶ、ボクのせい』製作委員会
公式サイト:bitters.co.jp/bokunosei
公式Twitter:@bokunosei0811

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