『初恋の悪魔』魅力的な台詞のオンパレード 松岡茉優が重要なカギを握る?

 言わずもがな第2話も魅力的な台詞のオンパレードだった『初恋の悪魔』(日本テレビ系)。「お疲れさまです」に対する小鳥(柄本佑)の「言われなくても疲れてるよ」に「恋愛は病院のご飯のようなもの」という鹿浜(林遣都)の歪み具合など、抽出していけばきりがない。特に気に入ったものを選べば、事件現場の監視カメラ映像を不眠不休でチェックする渚(佐久間由衣)を見ながら小鳥が言う「人間からお風呂とお布団を奪ったらどうなる?」という問いに対して、摘木(松岡茉優)がすぱりと答える「殺し合う」の一言。まさしくその通りかもしれない。

 今回4人が捜査するのは、とある団地で起きた殺人事件。人の多い夕方に突如として団地内に響き渡った叫び声。住民たちは皆、身を守るために自分たちの家へと退避して目撃者は誰もいない。かつて人気芸人だった被害者と、なんらかの揉め事のあった3人の人物が捜査線上にあがるのだが、鹿浜は即座に被害者の弟で相方でもある日出夫(六角精児)が犯人であると主張。しかし日出夫には被害者から金を借りていたことなど充分な動機があったものの、監視カメラには完璧なアリバイが記録されていたのである。

 自宅捜査会議の際に鹿浜がつぶやく「マーヤーのヴェール」は、第1話で説明されたように「現実に囚われていると本質を見えなくなる」ということを意味している(アルトゥル・ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』に出てくる言葉だが、突き詰めるとかなり複雑な話になりそうなので省かせてもらう)。本作においてそれを“剥ぎ取る”という行為は、彼ら4人が実に立派な事件現場の模型を前にしてその空間へと入り込み、事件発生前後のできごとを俯瞰的に臨場することにほかならない。むしろこれが、このドラマにおける唯一のミステリー的見せ場といえよう。

 事件の発生→刑事課が捜査し渚が張り切る→小鳥が見かね、馬淵(仲野太賀)ら4人で鹿浜家で“マーヤーのヴェール”を剥ぎ取り→導き出された推理の結果を小鳥が摘木の自転車に乗って渚に手紙で伝えにいくことで、事件が推理通りに解決する。もっともこの一式のテンプレートはエピソード構成上の軸となっているが、今回描かれた事件のようにその内容が4人の内面へと影響をもたらしていくという点がドラマ全体の本質であろう。劇中で馬淵は、兄を失った弟の姿(兄が被害者で弟が加害者であったわけだが)に、自分と殉職した兄・朝陽(毎熊克哉)と照らし合わせるような様子を見せる。

 捜査が終わり、摘木に朝陽のことを話す馬淵。そして彼は、以前摘木と資料室でばったり鉢合わせた際、彼女が朝陽の事件資料を探ろうとしていたのではないかと訊ねるのだが、まんまとはぐらかされてしまう。朝陽のスマホが持ち去られていたことを雪松(伊藤英明)から教えられる馬淵に、おそらく朝陽のものと思しきスマホを持っている摘木。前回に続いて摘木のバックグラウンドが大きな謎として機能したわけだが、この辺りの人間関係が今後の展開の重要なカギとなりそうだ。

■放送情報
『初恋の悪魔』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00~22:54放送
出演:林遣都、仲野太賀、松岡茉優、柄本佑、佐久間由衣、味方良介、安田顕、田中裕子、伊藤英明、毎熊克哉
脚本:坂元裕二
演出:水田伸生ほか
プロデューサー:次屋尚ほか
チーフプロデューサー:三上絵里子
制作協力:ザ・ワークス
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/hatsukoinoakuma/
公式Twitter:@hatsukoinoakuma
公式Instagram:@hatsukoinoakuma_ntv

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