中村獅童、“名刀の主”として『鎌倉殿の13人』を支えた品格 「梶原景時の変」で何を残すか

 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)で中村獅童が演じる梶原景時は、周囲の御家人たちを常に一歩引いて見ているところがある。それは、「石橋山の戦い」で敵の大将だった源頼朝(大泉洋)を見逃し、「この人(頼朝)は天に守られている」と確信するに至るまで、自分が正しいと信じる道を進んできたからこその自信の表れでもある。

 また、その確固たる自信と真っ直ぐすぎる忠誠心が時に敵を作り、誤解を招く原因にもなってしまうほど、プライドの高さは人一倍。御家人として自分が何をすべきか、「すべては頼朝のため」、まさに身命を賭して仕えてきた風格が自然と漂う。荒々しい御家人たちの中にいて、品格さえ感じさせる。そこがまた仲間たちに疎ましくも思われてしまうところかもしれないが……。

 演じる中村獅童の目つきも鋭く、何を考えているのか、相手を見下しているのか、真面目に話を聞いているのか、不遜な態度が気になるのも、観る側によって異なる印象を受けるところが面白い。

 頼朝亡き後、後継者である頼家(金子大地)を前にすると息子を心配している父親のようであり、自分の言うことだけを聞くように手なづけようとしている策士に見えることがある。いずれにしても、自分が鎌倉殿を守るという気持ち自体に嘘はないのだろう。

 7月24日に放送される第28回「名刀の主」。タイトルに「名刀」が使われているが、歌舞伎には『梶原平三誉石切』という演目がある。悪役として描かれることの多い梶原景時が、この作品では賢く勇敢な武将として登場する。

 実際に、『鎌倉殿の13人』で梶原景時役の中村獅童も歌舞伎役者として舞台で演じている。舞台で演じた役柄を大河ドラマで演じるというのは、スター俳優であってもなかなかないことなのでは? これこそ、役者冥利に尽きるというもの。

 悪役、いい役などと簡単に割り切れない深み、時に凄みのある演技を見せてくれている中村獅童にとってハマり役を超えた、強い縁を感じる役といえるだろう。

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