『ユニコーンに乗って』杉野遥亮は心優しい役がよく似合う 社内恋愛禁止の理由が明らかに

「貧乏少女とここで会っちゃったからですよ」

 「ドリームポニー」の創業秘話と創業メンバーたちの出会いが明かされた『ユニコーンに乗って』(TBS系)第3話。

 大手不動産グループ社長の一人息子で、親に決められた将来、敷かれたレールがあり、何でもそつなくこなせてしまう分、夢中になれるものもなくただただ空虚に過ごしていた功(杉野遥亮)の前に突然現れた佐奈(永野芽郁)。高卒の佐奈は自分の夢に向かって真っ直ぐで、その実現のために次郎(前原滉)の代わりに大学の授業を受けているいわゆる“モグリ”だ。起業の勉強のために大学の講義を受け、人前で堂々と自身の夢を語り、そして功に「何のために勉強してるんですか? どうして大学に通ってるんですか?」とごくごく自然に問いかける。そんな佐奈は彼にとっては初めて出会うタイプの人間で、何だか気になりどうしても放って置けない存在だったようだ。佐奈が“誰もが無料で学習できるアプリ開発”の夢のためエンジニアとして功を誘ったことが「ドリームポニー」の始まりであり、功の人生にとっても大きなターニングポイントとなったのだ。

 最初は就活までの残りの学生生活という期間限定での協力のつもりが、ビジネスコンテスト(ビジコン)での優勝をきっかけに、またその過程で初めて何か一つのことに夢中になることの高揚感ややりがいを実感した功は、就活ではなく佐奈との起業の道を選んだ。これは、功が初めて感じた“自分で、自力で人生を歩んでいる実感、手触り”だったのかもしれない。

 功役を演じる杉野は、自分とは異質な存在や世界に対してもオープンで、自身の中に芽生えた違和感を無視できず見過ごせない、そんな心優しい役どころが本当によく似合う。何と言ってもハマり役だった『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)でも、喧嘩っ早いが根は純粋なヤンキー・森生という実に愛すべきキャラクターを好演し、弱視の盲学校生・ユキコ(杉咲花)との宝物のような恋愛模様を見せてくれた。本作での功も父親から佐奈について「お前とは住む世界が違うんだから」と言われていたが、思わず森生を思い出してしまった視聴者も少なくなかったのではないだろうか。杉野演じる役どころは本当にこの“住む世界”を自由に縦横無尽に行き来してしまえる、分け隔てのなさと本質を見抜く鋭い審美眼を持ち合わせている。

 いくら周囲から「顔よし、スタイルよし、生い立ち最強」と言われても虚しいだけで、本人としては「俺にはずっと何もないって思ってた。やりたいことも叶えたい夢も」という功の言葉が嫌味を一切伴わず切実さを持って響くのは、やはり杉野が丁寧に佐奈と出会う前の功の心に巣食う虚無感や諦めを散りばめ見せてくれていたからこそだろう。佐奈と出会うまではあらゆることに対して距離感があり、何なら自分自身の人生に対してさえも傍観者で他人事のような温度感だった功が、佐奈と一緒に夢を追いかける中で徐々に徐々に自身がバッターボックスに立ち、熱中できる喜びを見つけじんわりと体温が高まっていく様子を、そんな小さな変化の連続を見事に映し出してくれていた。

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