映画『ゆるキャン△』で描かれた“ゆるくない”現実 キャンプ場作りから社会問題を考える
また、地方都市の様々な現実も物語に大きく影響を与える。千明は、一度は東京のイベント会社に勤めていたが、山梨の観光推進機構にUターン転職していた。そこでは、数年前に閉鎖された施設の再開発計画を担当しており、リンの「キャンプ場にすればいいじゃん」の一言で、みんなとキャンプ場開発を進めることを決意するのだ。
各地には地方創生を目的として作られたものの、運営維持が続かず老朽化したまま放置されている施設や建物が今も数多く存在している。千明たちがキャンプ場にしようとした土地もそんな場所で、維持管理に回す予算も無かったため、草はぼうぼうで、建築物も朽ち果て鉄骨がむき出しになっていたりと惨憺たる状況。そんな場所をどうやってキャンプ場にするのか、どういう順序で何を進めるのか、何が必要なのか。結構細かに描かれているところも、興味深く観ることができる。
そんなキャンプ場にキッズエリアを設けることを提案するのが、地元山梨で小学校教諭を務めているあおい。『SEASON2』では、よく妹のあかりを連れて登場し、妹思いの面倒見のいいお姉ちゃんという印象だっただけに、小学校の先生になっていたのは納得だ。映画では、自身が勤める小学校が廃校になるエピソードも描かれ、地方都市の少子化の現状も、今一度改めて考えさせられるものがあった。
そして恵那は、横浜のペットサロンでトリマーとして働き、キャンプ場にドッグランを作ることを提案する。TVシリーズでも愛犬ちくわのために高額なペット用テントを買って千明たちを驚かせるなど、いいとこのお嬢さんといった雰囲気から、横浜というのが絶妙だ。なでしこたちに感化されてキャンプにハマった一人で、行動力は人一倍。映画でも大胆さを発揮して、キャンプ場作りに貢献していく。
仕事との向き合い方、地方が抱える問題、それがどうキャンプ場作りと繋がって行くのか。また、そもそもキャンプ場は、どうやって作るものなのか。そして5人の変わらぬ友情、地域住民との交流など。決してゆるくはないキャンプ場作りという目的を主軸に、様々なテーマが描かれている。
■公開情報
映画『ゆるキャン△』
全国公開中
キャスト:花守ゆみり、東山奈央、原紗友里、豊崎愛生、高橋李依
原作:あfろ(芳文社『COMIC FUZ』掲載)
監督:京極義昭
脚本:田中仁、伊藤睦美
キャラクターデザイン:佐々木睦美
オープニングテーマ:亜咲花「Sun Is Coming Up」
エンディングテーマ:佐々木恵梨「ミモザ」
アニメーション制作:C-Station
配給:松竹
(c)あfろ・芳文社/野外活動委員会
公式サイト:https://yurucamp.jp/
公式Twitter:@yurucamp_anime