平野紫耀、永瀬廉ともまた違う? 『ドラゴン桜』『みらてん』を経た高橋海人に感じる未来
「影が薄い」「地味」などといえば、異議を唱える方がいるかもしれない。しかし筆者としては、リーダー的存在だった第4話までの伊庭と、自らを控えめな役どころに収めた第5話以降の彼のキャラクターの変化の滑らかさに、「上手い!」と唸らされた。後輩たちや桐沢に脚本上フォーカスしているのは当然だろうが、伊庭のようなある種スター的に扱われたキャラクターのスケールを抑え込むというのは容易ではないはず。ボクシングに打ち込む一方で秀才でもある伊庭という人物の情熱的かつ理知的な二面性を、高橋はサラリと表現してみせた。そして、引退した人間として部のことは後輩たちに任せて見守り、何か問題が起こった際には熱さと冷静さをもって助言していたのも印象深かった。彼はもう、部の長でもなく、ボクサーでもない。ボクシング部の現役メンバーとは完全に違うところに立っていることを自然な形で示していたと思う。作品内における自分の役の立ち位置を完全に自覚していることが前提のパフォーマンスだ。
高橋が所属するKing & Princeといえば、平野紫耀や永瀬廉らも俳優として名を揚げつつあるが、彼らと高橋は違う経験を積んでいるように思うのだがどうだろうか。高橋は『ドラゴン桜』 (2021年/TBS系)でも東大を目指す高校生を演じていたのがいまだ記憶に新しい。そして同作でも『みらてん』と同じように、“師匠”の存在があった。主演の阿部寛である。『ドラゴン桜』では阿部と、『みらてん』では木村と師弟関係を築き、ぶつかり合い、高橋が演じたキャラクターは多くのことを師匠らと共有していた。それは演じる高橋自身も同じだろう。“伊庭くんロス”の視聴者もいることと思うが、『みらてん』後の俳優・高橋海斗の未来の方が楽しみだ。
※高橋海人の「高」は「はしごだか」が正式表記。