『ちむどんどん』衝突する男女の価値観 朝ドラで描かれてきた働く女性像とは

 4月11日の放送開始から約2カ月、節目の第50話を経て、もうすぐ物語も折り返しを迎えようとしている『ちむどんどん』(NHK総合)。第11週「ポークとたまごと男と女」で焦点となるのは、女性の働き方について。

 二ツ橋(高嶋政伸)の代わりに厨房の司令塔であるシェフの代行に立った暢子(黒島結菜)だったが、矢作(井之脇海)をはじめ厨房の仲間たちから「女の下で働けるか」と反発を受ける。さらには子育てを巡って博夫(山田裕貴)と衝突する良子(川口春奈)の教師としての復職、和彦(宮沢氷魚)と愛(飯豊まりえ)が勤める東洋新聞社でも男女の役割をめぐる議論からトラブルが起きたりと、根っこにあるのは男女の価値観の違いだ。

 第11週の年代は1977年(昭和52年)6月。近作の朝ドラでは女性の働き方についてどのように描かれていたのだろうか。前期朝ドラの『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)で、ひなた(川栄李奈)が条映太秦映画村に就職するのが1983年~1984年。6年ほど時代は進んでいるものの、同じ昭和としてそれほど誤差はないと言えるだろう。ひなたは業務部に配属され、榊原(平埜生成)の下で働くことに。大部屋俳優や来客にお茶出しをするところから始まるのは、かつて暢子の就職先だった眞境名商事と変わらないが、榊原をはじめとする条映太秦映画村では女性蔑視的な態度や発言はほぼなかったと言える。

 また年代は前後するが、1960年代後半から1970年代前半の時代設定で、女性の子育てと仕事の両立について描かれていたのが、広瀬すずがヒロインを務めた『なつぞら』(NHK総合)だ。アニメーターのなつ(広瀬すず)は、夫の坂場(中川大志)との子供を妊娠。だが、先に産休に入った同僚の茜(渡辺麻友)が会社の東洋動画から正社員から契約社員になることを条件にされ退職。これからの生活のことや産後も仕事を続けていけるのか不安になるなつだったが、坂場の支えもあり今後の女性アニメーターの道を作るためにもアニメーターを続けながら、育児をしていくことを決意する。だが現実は残酷で、子供を預ける先の保育園は全部落ちてしまう。

 作画監督となったなつは、帰るのは深夜という一筋縄ではいかない子育てと仕事の両立が描かれていく。物語の中では、入社する時に「子供ができたら退職」という誓約書を書かされたという話も茜から明かされる一方で、冗談交じりではあるものの男性アニメーターとの価値観の相違が気になるシーンがいくつかあるのも事実である。茜はなつに「しかたないのよ。世の中がまだそうなんだから」と話していたが、同じアニメーション業界を描いた現在公開中の映画『ハケンアニメ!』でも吉岡里帆演じる瞳が現場スタッフの男性陣から“女性監督”として軽んじられるシーンがあり、昔も今も根底にある意識は変わっていないとも捉えられる。

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