『ちむどんどん』好対照な前田公輝と宮沢氷魚 暢子のパートナーにふさわしいのは?

 暢子(黒島結菜)が「アッラ・フォンターナ」で働き始めてから早くも5年が経過した。途中、新聞社でアルバイトをしたり、おでん屋を立て直したりと料理の技術だけじゃないことも学んだ暢子は、料理人としても人間としても成長中だ。時に暴走しがちな暢子は、多くの人に見守られ、支えられているが、特に同世代の智(前田公輝)と和彦(宮沢氷魚)の存在は大きいだろう。

 智は、暢子やその兄妹たちと幼なじみで、やんばるでは家族で小さな豆腐店を経営していた。今は、その豆腐店を継ぎながらも、いつか自分でもっと大きな商売をしたいという野望を抱いて東京で働いている。が、その野望がどこまで本当なのかは分からない。なぜなら、智は暢子に夢中なのだ。東京に来たのも、“暢子に会いたい”という気持ちが大きな原動力になっていたのは間違いない。もともと智は、小さい頃から病気がちな母の代わりに店に立ち、学校に行くよりも早く商売を覚え、家族に楽をさせたいと言うほど、家族思いで優しい性格。それは大きくなってからも変わっておらず、思いを寄せている暢子になら、なおさら優しい。

 暢子がおでん屋台の立て直しに挑んでいたときは、ブロッコリーやパプリカなど変わった材料を持ってきてバックアップ。智の態度は逆から言えば、暢子のやることを全肯定するイエスマンのようにも見えるが、これは暢子によく思われたい気持ちと、暢子が奮闘している厳しい世界で自信を失ってほしくないという気持ちの表れなのだろう。たしかに暢子が自分が作った料理に対して、「美味しいですよね!?」と自信をみなぎらせてこなくなったらちょっと寂しいし、前向きな暢子の姿は眩しくて可愛い。智はどこまでも、暢子のことを一番に考えているのだ。

 暢子に対して智と正反対の態度を取るのが和彦だ。暢子がおでん屋で出す料理を試行錯誤していた時、なんとか変わり種を流行らせようとする暢子に、和彦は「それはもはやおでんじゃないよね」「もっと心が安らぐような、沁みるような味のおでんを」とアドバイスする。その言葉は、“食べる人のことを考えて料理をする”という本質を捉えていて、的確だ。冷静な分析の中にも人を思う優しさが垣間見える、言葉を扱う新聞記者の和彦らしさがよく出ている。

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