チ・チャンウクが誘う魅惑的な世界 ミュージカル×重いテーマが魅力の『アンナラスマナラ』
30代のファン・イニョプが高校生に!
『女神降臨』で存在感を見せつけたイニョプが、本作で高校生を演じることで30代のイニョプが大丈夫か……? と思った人もいるかもしれないが、これが驚くほどハマっているからすごい。
イニョプが演じるイルドゥンは、家も裕福で、検事長を務める父親からは、法律家として歩んでいくことを望まれている。
何の疑問も持たずに勉強に邁進してきたイルドゥンだが、隣の席になったアイに恋をし、ふとした偶然からリウルと知り合うことによって、「決められたレールを歩んでいく人生で良いのだろうか」と考えるようになり、親の言いなりになってきた自分自身にも苛立ちを覚えるようになる。
思春期の揺れ動く繊細な気持ちをイニョプは丁寧に演じているのだが、特に見せ場となるのがアイの想いを歌に乗せるシーンだ。眼鏡姿で、少しコメディっぽい雰囲気で歌うイニョプがとてもキュートで、新たな魅力を放っている。
ほどよいミュージカル調が重いテーマの緩衝材に
“ミュージックドラマ”と謳われていた本作は、一体どのようなタイプのドラマになるのか、当初から期待が高まっていた。物語は、映画『ラ・ラ・ランド』のオープニングを思わせる明るく軽快な音楽で、出演者が歌い踊るシーンから始まる。
韓国ドラマではあまり見ないオープニングで戸惑う人もいるかもしれないが、これから何が始まるのだろうとワクワクし、つかみは抜群だ。もちろんチャンウクも魔術師姿で歌とダンスを披露している。
ミュージカル調は苦手……という人でも、安心していただきたい。この作品はセリフを歌に乗せていくタイプのものではなく、歌のシーンと芝居のシーンはきっちり分けられている。しかも歌のシーンは思っていたほど多くはなく、ミュージカル好きにとっては少し物足りなさを感じるかもしれない。
この物語は、魔術というファンタジー要素が盛り込まれているわりには、韓国が直面している非常に現実的な社会問題が取り上げられている。父親が事業に失敗して貧しい生活を送らざるを得ないアイと、裕福な家庭で何不自由なく生活しているイルドゥンの対比は、格差社会を象徴しているといえるだろう。
そういう背景もあり、とりわけアイを取り巻く過酷な環境を目の当たりにすることになって重い気分になったり、やるせない感情が押し寄せてきたりする。そんな時、非常に良いタイミングで歌のシーンが入るので、音楽が気持ちをやわらげる緩衝材になっているのだ。
そしてキャストたちの歌も心地よい。ミュージカル俳優が舞台で披露するパワフルな歌声ではないが、フッと肩の力を抜くことができ、癒し効果抜群だ。チ・チャンウク、チェ・ソンウン、ファン・イニョプそれぞれがソロで歌うシーンもあるので、それぞれ堪能したい。
物語のエンディングは、これまた韓国ドラマではあまり見ることがない構成となっている。話が終わってもぜひエンドロールの最後まで見届けてほしい。
■配信情報
Netflixシリーズ『アンナラスマナラ -魔法の旋律-』
Netflixにて独占配信中
(c)Lim Hyo Sun/Netflix