林遣都×仲野太賀の共通点は“人間臭さ” 坂元裕二脚本『初恋の悪魔』は期待しかない!

 時折、座組みを見ただけで、これは面白いはずと確信するドラマがある。7月スタートの『初恋の悪魔』(日本テレビ系)はまさにそんなドラマだろう。主演は、林遣都と仲野太賀。脚本は、坂元裕二。ドラマ好きなら思わずニヤリとする布陣だ。激戦必至の夏ドラマの中でもおそらく先頭争いをリードするであろう本作に期待する理由を語っていきたい。

林遣都&仲野太賀、その共通点は“人間臭さ”

 まずは何と言っても、主演を務める林遣都&仲野太賀の組み合わせが期待をそそる。林遣都は1990年生まれの31歳。仲野太賀は1993年生まれの29歳。両者の共通点は、共に世代屈指の演技巧者であること。だが、その歩みは対照的だ。

 林遣都は、2007年、映画『バッテリー』で主演デビュー。アイドルグループとしての活動があるなど、俳優をやる前から実績や人気があるケースは別として、まったくの無名俳優がデビュー作で主演を務めるというのは極めて異例だ。林が演じたのは、天才投手・原田巧。その天才性と少年性を共存させた佇まいは、手垢のついていない林だから出せるもので、新人の林が抜擢されたのも納得の輝きがあった。同作で第31回日本アカデミー賞新人俳優賞など主要な映画賞を総なめ。林遣都の登場は、映画界にとってひとつの事件だった。

 以降、『DIVE!!』『ラブファイト』『風が強く吹いている』など数々の映画に主演。青春映画に欠かせない俳優として、この世代ではいち早く頭角を現した。ドラマでも『小公女セイラ』(TBS系)、『美丘-君がいた日々-』(日本テレビ系)など大きな役が続き、いわゆるスター路線を歩んでいくことが予想されていた俳優だった。

 一方、仲野太賀は自他共に認める苦労人タイプ。事務所のスターダストプロモーションに入ったのも、『バッテリー』で林と共演した際に、自ら林のマネージャーに直談判したのがきっかけだった。以降、数々の作品に出演したが、大役は少なく、菅田将暉や染谷将太など同世代の友人が次々と売れていくのをそばで見ながら、くすぶっていた時期もあったとよくインタビューで話している。

 だが、そこで仲野は腐らなかった。どんな監督の作品に出たいか、自分なりに戦略を練り、深田晃司を筆頭に、吉田大八、熊坂出、松居大悟など名匠から新鋭まで多彩な監督の作品に出演。武者修行のようにして培った演技力が『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)での怪演を生み、一気に全国区へ。今や映画・ドラマに欠かすことのできない俳優として引っ張りだこ。その硬軟自在な表現力は役柄に厚みを加えるだけでなく、作品そのものに絶妙な緊張と緩和をもたらしている。

 こう見ると対照的な2人だが、泥臭さという点では通じるものがあるように思う。林もまた、20代に入ったあたりから同世代の俳優が次々と現れ、自分と比較して悔しさや焦りを抱いた時期もあったと明かしている。事実、民放の連ドラで主演を務めるのは『玉川区役所 OF THE DEAD』(テレビ東京系)以来、約8年ぶり。GP帯に限定すると、本作が初めてとなる。決して恵まれた環境にあぐらをかいてきたわけではない。むしろ役者として生き残るために愚直に芝居と向き合い、研鑽を積んできた。そして、その努力が『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)でのブレイクへと実を結び、近年の快進撃の土台を支えている。

 そんな泥臭さが、2人の演技から醸し出る人間臭さにつながっている。近作で言うなら、林は『愛しい嘘~優しい闇~』(テレビ朝日系)で演じた雨宮秀一/中野幸がそうだろう。すべての罪が暴かれ、死を決した中野が、ある事実を知らされ、それでも生きたいと願う。孤独から希望へと昇華していく心の動きを、目にいっぱい涙をため、唇を震わせ、顔を真っ赤にしながら表現した。あの役に身も心も投じるような没入ぶりが、まるでその人物が本当にどこかで生きているような実在感を生んでいる。

 仲野なら『コントが始まる』(日本テレビ系)の美濃輪潤平が印象的だった。売れないお笑いトリオ・マクベス。博多のラーメン屋でラーメンを食べ終えたあと、高岩春斗(菅田将暉)は解散を告げる。そのときの笑いながら、やがてむせび泣くという潤平のリアクションは、人間の滑稽さと哀愁が入り混じった絶品の演技だった。仲野の演技には、おかしみの中に人生のせつなさややるせなさがつまっている。

 林も仲野も、感情の発露が瑞々しく生々しい。皮膚にナイフを立てたら、ぷっくりと赤い血が溢れてくるように、何気ない瞬間からこぼれ出す感情を、新鮮に、いきいきと表出させる。そこに作為がないから、つい観る側も感情移入させられてしまう。そして、作品そのものの質を上げる。それがヒット作であるとか大作であるとか関係なく、2人はいつも俳優として確かな仕事をしている。その仕事ぶりへの信頼があるから、2人が組むと聞いた瞬間、つい期待してしまうのだ、これはとんでもないものが見られるのではないかと。

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