レンタル彼女、パパ活、整形依存…… 吉川愛主演『明日カノ』から考える“幸せ”のハードル

 実写ドラマ化された『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS/TBSドラマイズム、以下『明日カノ』)は、原作でも人気の高い「ホスト編」へと差し掛かっている。レンタル彼女にパパ活、整形依存、ホス狂い。さまざまなテーマを抱えた主人公たちが同じ大学や町ですれ違い、物語が交差していく本作。それぞれが抱える心の闇や葛藤、生き方の難しさなどが描かれ、なかなかにシビアな描写やリアルなセリフが話題を呼んでいるが、ドラマは漫画で描かれた内容を比較的ライトに追えるものになっている。

 そんな本作で興味深く扱われるのは、他人の生き方への否定だ。“多様性”という言葉が新しいものではない今の世の中に対して、本作に登場する女性陣の生き方は物語の中で誰かに否定されたり、拒絶されたりする。人には内緒でレンタル彼女をしている雪(吉川愛)は、大学で「すげえキモいおっさんと手を繋いで歩いていた」など噂されるようになり、ついには宣材写真も出回ることに。しかし、雪はその生き方を自ら選んでいて、友達のリナ(横田真悠)に「可哀想」と言われたことを何より受け入れがたく感じた。

 レンタル彼女も、今は人気漫画/アニメ『彼女、お借りします』があるように、様々な作品で見かけるものになった。少し前まで、その職業や存在は表立ってあまり出てこないものだったはずだ。パパ活も、整形依存も、ホス狂いもこれに通じる。しかし、SNSが普及したいま、より当事者の実情や価値観に多くの人がアクセスできる環境が整ったことによって、先入観を捨てたり、興味を持ったり、同じ気持ちを感じた人が共感できるようになった。ここに、一つ『明日カノ』という作品が人気を博す所以があるだろう。

 しかし、裏を返せばSNSの普及で他人の生活(それが真実か嘘かはさておき)が見えやすくなってしまったことにより、ジャッジしやすい/されやすい環境が整ってしまったのも事実だ。ブランドバッグやホテルのアフターヌーンティーの写真が投稿され続ける、明らかな「パパ活Instagram」を見て、それを肯定的に見る人は「自分も同じような生活を送りたい」と感じ、同じ道に足を踏み入れようとする。一方、否定的に見る人は「ずるい」と当事者を蔑もうとする。しかし、本心にあるのはやはり“羨ましさ”なのだ。雪のことを「あれは絶対やってるって」とBBQの場で話していた男の子は、「簡単に稼げていいよなあ~」というような言い方をした。結局、人は自分より楽に成功している人間が面白くないのである。

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