『パンドラの果実』岸井ゆきのが経験した“超えてはならない一線” パートナーの死の真実は

 「通常であれば共食いを始めるころ」と、ぞっとするような台詞を、カメラに向かって嬉しそうに報告する速水。彼女が喜ぶのは当然だ。速水は、プロメテウスウイルスの副作用をなくすべく研究を続け、成功したあかつきには特許を申請しようとしていた。結果、プロメテウスウイルス変異株に感染したマウスは死んだ。共食いをしないかわりに、自身のエネルギーを使い果たした結果、急速に老化が早まったことが原因だった。そして速水も、自らが生み出したウイルスを守ろうとして感染し、死んだ。

 速水が特許申請を考えていたことを知り、「私たちの研究はお金じゃないと思っていた」と、最上が切なくつぶやく。「発明を守るという意味もある」と、小比類巻は、速水が準備していた特許の申請書を最上に見せる。研究者の氏名欄には、最上と速水の名が連名で記されていた。速水は、ウイルスの副作用をなくすことができれば、闇を取り払えば、最上が科学界に戻ってくると思って研究を続けていたのだろう。速水にとって最上は、科学に光を生み出す存在であり、ただ一人のパートナーだった。

 速水の、底なしの“苺バカ”ぶりを笑いながらも、待ち合わせのカフェで苺パフェの取り置きを頼んでいた最上。複雑な過去はあれど、速水に会えることが楽しみだったのだろうと思うと、姿が変わり、冷たくなってしまった再会が悲しい。その原因の根源に、自らが生み出してしまったウイルスがあることを思えばなおさらだ。長谷部のように気の利いた言葉は言えずとも、そっとハンカチを差し出すのが、小比類巻の優しさだった。

 気がかりは残る。果たして速水は“偶然”ひったくりに合ったのだろうか。プロメテウスウイルス変異株が、何者かの手に渡ったような描写もあった。光も、角度変われば闇であり、使いようによっては薬も毒。すべては表裏一体だ。「一度開けた箱は二度と閉められない」(第3話より)、最上と速水が偶然、開けてしまったパンドラの箱は、これにて本当に閉じられたのだろうか?

■放送・配信情報
日本テレビ×Hulu共同製作 新土曜ドラマ『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』
Season1:日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
Season2:Huluにて、6月配信
出演:ディーン・フジオカ、岸井ゆきの、佐藤隆太、西村和彦、本仮屋ユイカ、シャラ ラジマ、安藤政信、板尾創路、石野真子、ユースケ・サンタマリア
原作:中村啓『SCIS 科学犯罪捜査班 天才科学者・最上友紀子の挑戦』(光文社文庫)
脚本:福田哲平、関久代、土城温美
監督:羽住英一郎
主題歌:DEAN FUJIOKA「Apple」(A-Sketch)
チーフプロデューサー:三上絵里子、茶ノ前香
プロデューサー:能勢荘志、尾上貴洋、古屋厚、中村好佑
(c)日本テレビ
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