『鎌倉殿の13人』市川染五郎を大河でまだ観たかった “光”を失っていく義時の変化も必見

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第17回「助命と宿命」。木曽義仲(青木崇高)の討伐により鎌倉に再び暗雲が立ち込める。源頼朝(大泉洋)は義仲の嫡男・義高(市川染五郎)を危険視し、鎌倉へ戻っていた義時(小栗旬)に義高の処断を命令する。

 第17回は、父・義仲同様、自身のまことを貫いた義高の凛とした佇まいと、人の世を治めるため鬼になる覚悟を決めた義時の冷酷な顔つきが印象的な回となった。

 義高を慕う大姫(落井実結子)のためにも、政子(小池栄子)は義高の命を救おうと奔走するが、義高は政子に対して「私は鎌倉殿を決して許しはしない」と言った。義高演じる市川染五郎の佇まいや声色は落ち着きを払い、静かな印象を抱くが、確かな怒りに満ちている。このシーンでの染五郎の鋭い眼差しには、大姫と遊んでいたときの優しげな雰囲気は一切なく、父・義仲の思いを理解しながら何もしなかった義時への怒りと蔑みが感じられる。「いずれ私より、ふさわしい相手が見つかります」と大姫を気遣う優しさも見せていたが、頼朝が政子に語ったように、武士にとって父を殺された恨みは深い。落ち着いた声色ではあっても「一刻も早く、この首を取ることをお勧めいたします」という台詞には強い意思があった。

 そんな義高だが、巴御前(秋元才加)を通して「生きて源氏の悲願成就を見届けてほしい」という父の望みを聞く。父の思いを取りこぼすことのないよう一言一句噛み締めるように義仲の文に目を通す染五郎の表情が心に染み入る。義高は「父の思い、しかと受け止めた」と巴に伝えた後、政子の提案どおり、鎌倉から逃げることを承諾した。

 義高に生き延びてほしいと願う者たちの協力もあり、御所を抜け出した義高だが、義時を信じることができず、匿われていた寺から逃げてしまった。藤内光澄(長尾卓磨)に見つかり、義高は刀を抜こうとしたが、刀には手毬の紐が絡みついていた。大姫との思い出が残る手毬にどのような感情を抱いていたのか、その最期の表情を見ることは叶わなかった。大姫と過ごした時間で見せた笑顔は嘘ではないはずだ。大姫を思ったのか、頼朝への憎しみを募らせたのか、いずれにしても心苦しい。

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