『鎌倉殿の13人』菅田将暉が義経として無双状態 青木崇高&秋元才加の悲しい最期も

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第16回「伝説の幕開け」。源頼朝(大泉洋)は、弟・範頼(迫田孝也)を総大将、梶原景時(中村獅童)を軍奉行とした本軍を派兵。北条義時(小栗旬)も従軍し、先発した義経(菅田将暉)と合流する。

 第16回は木曽義仲(青木崇高)の最期と、義経と景時の不和の予感を感じさせるやりとりが印象深い回となった。

 頼朝軍に対して「ともに平家を討とう」と呼びかけた義仲だったが、その願いは叶わなかった。義経の策にはまり、京を捨てる決意をした義仲は後白河法皇(西田敏行)の御所に赴く。法皇は姿を現さなかったが、義仲は「法皇様の悲願成就を願う」と声を張り上げて思いを伝えた。青木の表情からは平家追討が果たせなかった悔しさだけでなく、お目通りが叶わなかった悔しさも滲む。「最後に一目、法皇様にお目通りしとうござったが……」と声をあげたときの表情や声色は、苛立ちに似た感情のように見えた。だが、唇を噛み、心を整えているような仕草を見せた後で、はっきりとした口調で「それも敵わぬは、この義仲の不徳の致すところ」と伝える青木の姿を見ていると、法皇への敬意と安寧な世を願う義仲の想いが強く感じられ、切なかった。

 近江に向かった義仲だが、そこには範頼の軍勢が待ち構えている。義仲は巴御前(秋元才加)に「お前は、ここで落ち延びよ」と言った。巴は拒否するが、義仲は意志を曲げなかった。秋元の台詞回しや演技から、義仲を深く想う巴の気持ちが伝わってくる。秋元の凛々しい目つきからは義仲の身を案ずる優しさが滲む。巴は義仲の真意を理解している。義仲が、源氏同士の争いの終わりに覚悟を決め、巴や息子・義高(市川染五郎)が生きる未来を望んでいる、ということを。だが、巴の想いは敬愛する義仲とともに戦い続けること。だからこそ彼女は涙をこらえ、振り絞るように「嫌でございます」と言い、「地の果てまで殿のおそばに」と言うのだ。

 そんな巴の頬を強く、けれども優しく両手で包み込んだ義仲は、じっと巴を見つめると「さらばじゃ」と言った。青木の強い眼差しが巴の顔を捉える。彼女の顔を目にしっかりと焼きつけたいと願う義仲の想いが伝わる。別れを告げたその声色は、愛しい者に向けられたとても優しいものだった。

 「何一つ悔いはない」と清々しい顔を見せた義仲だが、たった一つの心残りを口にしようとした瞬間、その命を終えた。最期まで勇ましく、まことを貫いた人物だった。

 義仲と巴の深い絆とは対照的に、義経と景時のやりとりにはハラハラさせられる。義経は景時の策を「駄目だな。話にならない」と一刀両断するだけでなく、「そんなのは子供でも思いつく」と煽るような表情で言い切った。また義経は、自身の策を滞りなく理解できない御家人たちに対してイライラする様子も見せる。菅田の演技からは、義経が天才肌ゆえ、御家人たちが理解できないということが理解できないさまが伝わってくる。とはいえ、煽られた側からすれば堪ったものではない。菅田が「坂東武者は口だけかあ」とイキイキとした表情で煽り立てるのとは相反するように、景時演じる中村の表情は固く、こわばっていく。その場では意外にも「九郎殿が正しゅうござる」「全て理にかなっておりまする」と、義経の案をのんだ景時だが、義経の振る舞いに対して思うところなし、ということはないはずだ。

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