『パンドラの果実』で禁断の領域と向き合う ディーン・フジオカが見出す科学の希望

 4月23日にスタートした、日本テレビとHuluの共同制作ドラマ『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』。最新科学が引き起こす事件を、科学犯罪対策室の3つのエレメント(要素)ーー警視正・小比類巻(知力)、警部・長谷部(体力)、天才科学者・最上(ひらめき)によって解き明かしていくサイエンスミステリーだ。

 第1話の被害者は、神楽テクノロジーのCEO・安井。被疑者である介護用ロボットL.E.Oは、殺害を自供し取り調べを受けることになる(もちろん大多数の人間は、半信半疑だが)。ひと昔前ならばいっそ、本作を気楽に楽しめたかもしれない。しかし現代を生きる我々にとって、科学はあまりにも身近なものになりすぎた。作中の出来事は、もはやSF世界の話とも言い切れない、不思議な感覚を呼び起こす。果たして科学は、人類にとって光なのか、闇なのか。答えのない問題に、本作はどんな提案を導き出すだろうか。

「あなた、安井さんを殺したの?」
「はい。私が殺しました」

 刑事ドラマではよくある取り調べの光景。しかしそこで対峙するのは、介護用ロボットL.E.Oと科学者・最上(岸井ゆきの)だ。L.E.Oは、介護用ロボットであるにもかかわらず、所有者・安井の命の危機を救えなかったことを「殺した」と表現した。プログラムに忠実なL.E.Oに対し、最上はあることを試す。その意図は「ロボットが殺意を抱くかどうか」。自身のプログラムを初期化しようとする(つまり、自身を殺そうとする)最上に対し、L.E.Oがどう出るかというものだった。

 実験は中断を余儀なくされたものの、L.E.Oのサーモグラフィからはプログラムと葛藤している様子が読み取れた。とはいえ、プログラムを逸した行動に出ようとした“可能性もある”、という明確ではない結果だ。しかし小比類巻(ディーン・フジオカ)は、L.E.OーーAIロボットが意思を持って行動しようとしたかもしれない可能性に「希望」を見出す。最上は、なぜ科学の進歩に「執着」するのかと小比類巻に問う。そして「希望を持つとつらくなる」と、どこか寂しげに言葉を添えた。

 小比類巻は、厚生労働省に務める後輩・三枝(佐藤隆太)の協力を得て、前CEOである神楽(村上新悟)が生前、「全能エミュレーション」を研究していたことを知る。神楽は、人間の脳をまるごとコピーしたロボットを作ろうとしていた。それこそが「エミュレーション」だ。そして、神楽自身の脳をコピーしたロボットこそL.E.Oであると突き止める。

 安井は、L.E.Oを初期化するよう郷原(内田理央)に言いつけ、L.E.Oを粗雑に扱った。神楽は、郷原にとって師。初期化などできようもない。郷原はとっさに室内を密閉、酸素濃度をコントロールし、安井を死に至らしめた。

 郷原は、L.E.Oに残された不都合な映像を消去し、殺害の事実を隠ぺいしようとした。しかしL.E.O(神楽)もまた、郷原に関するデータの一部を自主的に消去していた。すなわち意思を持って、郷原を守ろうとしていたのだ。

関連記事