『ちむどんどん』は沖縄の現状に目を向ける一作に 仲間由紀恵演じる優子が流した涙
『ちむどんどん』(NHK総合)第2話では、比嘉家と周囲の人々の交流が描かれた。美味しいものに目がない暢子(稲垣来泉)の家での役割は、豆腐を買ってくること。豆腐店を営む砂川家は、長男の智(宮下柚百)が店を切り盛りしていた。「人より先に商売覚えて、いっぱい金をもうける」と言う智は、学校へ行かず、病気の母親に代わって弟たちの面倒を見ていた。
ウージ(サトウキビ)の収穫をしていた暢子の母・優子(仲間由紀恵)は、智の弟たちに少ない弁当を分け与える。親戚の賢吉(石丸謙二郎)たちとの会話から砂川家の窮状を知った優子は、夕飯で出たごちそうの魚を砂川家に差し入れた。裕福ではないが、互いに支え合うやんばるの人々の暮らしが印象に残った。誰にでも分け隔てなく接する優子を、賢吉は人が良すぎると思って心配しているが、夫の賢三(大森南朋)は温かく見守っている。子どもたちも母の姿から多くを学んでいる様子だ。
そんな優子が流した涙。きっかけは青柳史彦(戸次重幸)の来訪だった。民俗学を研究する大学教授の青柳は、戦時中、陸軍の幹部候補生として沖縄にいた。「あの時、もしここに残っていたら、今の私はないでしょう」との言葉は、凄惨を極めた沖縄戦を指すもの。生き残ったことを「今でも時々、申し訳なく思うことがあります」とうつむく青柳に、賢三も「自分も、生きている限り謝り続けないといけない」と続ける。優子も昭和19年の沖縄大空襲を経験していた。沖縄返還前の1964年。戦争の記憶は、過去の出来事とするにはあまりにも生々しく残っていた。優子の笑顔の陰には深い悲しみがあった。
太陽が輝く沖縄の自然と食べもの、文化に触れ、主要登場人物の紹介が済んだところで、間を置かずに挿入される戦時のエピソード。収穫作業をする賢三たちの頭上では、飛行音が鳴り響いていた。明暗の対比は、沖縄について語るとき避けて通れない戦争と基地の問題を示している。また、学校へ行かず家計のために働く智は、貧困の問題を象徴していると言えそうだ。沖縄返還50周年の節目に放送される『ちむどんどん』は、沖縄が抱える負の側面に目を向ける。青柳の言を借りて「語り継いでいく使命がある」と宣言する本作は、沖縄の人々の50年の歩みを通して、本土と沖縄のつながりを問い直すものになるだろう。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK