『妻、小学生になる。』中井芳彦Pが語る、奇跡が起きた舞台裏 鑑賞後のじんわりを目指して

観終わった後のじんわりを目指して

――先ほど原作漫画とは「同タイトルのもう一つの世界」を描いているというお話がありましたが、本作はキャラクターたちについてもオリジナルの設定が多くありましたね。

中井:私も脚本家の大島里美さんや演出家のみなさんも、ちょっと笑えるエッセンスが好きで。なので本作も、そういうドラマづくりができたらと思いました。寺カフェのメンバーを筆頭にコミカルな展開を取り入れたのもそうした狙いからです。なかでも、神木隆之介さんが演じられた貴恵さんの弟・友利は、新島家に起きた家族の秘密をサスペンス的にひとつ外側からの視点で「どうなってるんだ?」と探る、「視聴者の目線に近い視線で見つめるキャラクターを1人作りたいね」と大島さんとオリジナルで作った重要人物でした。もともと原作では貴恵さんに姉妹がいる設定なんですが、弟にしたほうが、“圭介と万理華=おじさんと女の子”という「何なの? あのふたりは」とツッコミながら、万理華の正体を暴こうと友利が追いかけていく姿もまた“知らない男の人と女の子”になっている、という特大ブーメランが返ってくる面白い展開になるんじゃないかなと思って。また、この役を神木さんに受けていただけたのも驚きでした(笑)。

――本当にすべてのキャスティングが「まさか」の連続だったんですね。

中井:本当にそうなんです。今となってはそれぞれの役が他の人ではちょっと考えられないくらい、ハマってくださって。万理華の母・千嘉役の吉田羊さんも「まさか」が実現したおひとりです(笑)。

――千嘉さんといえば、万理華の姿をした貴恵さんと2人暮らしをしているかのような光景も面白かったですね。

中井:第7話の「一杯やる?」と言うシーンは、原作にはない大島さんによるオリジナルの展開です。私も台本を読んでとても好きなやり取りです。

――「一杯やる」といってもミルクで(笑)。ドラマオリジナルの展開に大きく貢献した大島さんの脚本の魅力について教えてください。

中井:観てくださる方がどう感じるかをすごく大事にされています。お話しながらドラマっぽい作為的な表現や、どこかで観たことがあるような感じにしたくない、という熱みたいなものを感じます。ちょっとふざける力の抜け加減を見せながらも、1時間観終わった後にじんわりとくる。『凪のお暇』に続いて2作目ですけど、すっかり大島さんの書く世界観のファンです。本当に尊敬しています。

――エンドロールが一瞬で終わる感じも『凪のお暇』ファンとしては、懐かしい感じでした。

中井:ドラマにはいろいろな作り方がありますが、私はエンドロール=ドラマが終わっちゃう感じがしてしまうなと思っていて。スパッと終わったほうがむしろその余韻に浸れるような気がして、あの形になりました。そのまま一緒に観た人と、あるいはSNSで誰かと「どう思った?」みたいに語ってもらえたらなと。そうして同じ時間を過ごした方と、“いいものを観たな”と思ってもらえる時間が流れてくれたら嬉しいなと。

ドラマの中でずっと彼らの日常が続いていく

――出番のないタイミングでも石田さんや毎田さんが現場に駆けつけるなど、仲睦まじい雰囲気だった現場ですが、最終回に向けて寂しさはありませんでしたか?

中井:先日、神木さんが一足先にオールアップを迎えたんです。現場では毎田さんが神木さんとよく一緒にInstagramのリールとかも楽しそうに撮ったりして慕っていたので、どうなるかなとちょっと気になっていたんですが、毎田さんがボロボロ泣いてしまって。やっぱり毎田さんは撮影のためにわざわざ東京まで来て頑張っていましたし、1人ひとり撮影を終えていく感じは寂しかったのかもしれないですね。

 
 
 
 
 
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――いつかは別れがくること、だからこそ今を後悔なく過ごす、という点では、撮影現場そのものも、この作品が持っているメッセージともリンクするところがありますね。

中井:そうですね。本当にフィクションではありますが、縁があって家族のようになっているのは、傍から見ていてジーンと来るものがあります。そんな雰囲気になったのも堤さんの人柄かなと。本当にみんな楽しそうに仕事をされていて、「私、何もしてないな」なんて思いました(笑)。

――現場に石田さんが足を運んでいたからか、堤さん、蒔田さんとの家族として一緒に過ごした時間の積み重ねを感じました。

中井:私も第9話の圭介と麻衣ちゃんのシーンにも繋がっているなと感じました。すごくいいシーンが撮れると、現場でも思わずこみ上げるものがあって。でも、プロデューサーはこれが成立するかちゃんと見届ける責任があるんだ、と我慢するんです(笑)。それくらいこの作品に愛情を持って作ることができているのが幸せです。

――では最後に、最終回を楽しみにしている視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

中井:観た人それぞれが自分の人生に一瞬でもこのドラマが寄り添える、「明日も頑張ろう」と思える、それが今の時代のエンタメとしてやれることなのではないかと思っています。“ドラマチックで感動的なラスト”というよりも、ドラマの中でずっと彼らの日常が続いていると感じられるような余韻が残ればいいなと。そして、みなさんが階段を歩きながら、ふと圭介たちのことを思い出して「今ごろどうしてるかな?」なんて思ってもらえる作品になったらうれしいです。

■放送情報
金曜ドラマ『妻、小学生になる。』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:堤真一、石田ゆり子、蒔田彩珠、森田望智、毎田暖乃、柳家喬太郎、飯塚悟志(東京03)、馬場徹、田中俊介、水谷果穂、杉野遥亮、小椋梨央、神木隆之介、吉田羊
原作:村田椰融『妻、小学生になる。』(芳文社『週刊漫画 TIMES』連載中)
脚本:大島里美
プロデュース: 中井芳彦、益田千愛
演出:坪井敏雄、山本剛義、大内舞子、加藤尚樹
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tsuma_sho_tbs/
公式Twitter:@tsumasho_TBS

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