「THE」のあるところに新DCあり “シン・バットマン”としての『ザ・バットマン』

※本稿には『THE BATMAN-ザ・バットマン-』に関するネタバレを含みます。

 『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の衝撃・反響が広がっています。この作品は今までのバットマン関係の映画(直近だとベン・アフレックのバットマン)を刷新して新たなバットマン伝説を描くものです。そこで注目したいのは「THE」という冠詞がタイトルについていることです。今回なぜ『バットマン』でなく『ザ・バットマン』なのでしょうか?

 もちろん1989年のティム・バートン監督×マイケル・キートン出演の『バットマン』との差別化ということもあるのですが、昨今のDC映画で「THE」とつくものは“仕切り直し”を意識した作品であることが多い。例えば2021年公開の、ジェームズ・ガン監督の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』は2016年のデヴィッド・エアー監督の『スーサイド・スクワッド』に続く作品です。邦題には副題がついていますが、原題はガン監督版が『The Suicide Squad』、エアー監督版が『Suicide Squad』と、「THE」の“あるなし”の差があるのです。

『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(c)2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c)DC Comics

 ガン監督版はエアー監督版の続編の形を借りながらも、内容的には多くのキャラを刷新し事実上のリメイク作品に仕上がっていました。来年公開のエズラ・ミラー出演のフラッシュ映画もタイトルは『ザ・フラッシュ(原題)』です。エズラ・ミラー版フラッシュは2017年の『ジャスティス・リーグ』に登場したヒーローのソロ映画ですが、同じ趣旨のアクアマン、ワンダーウーマンの映画には「THE」がついていません。

 では、なぜわざわざフラッシュの映画にはついているのか? 噂ではこのフラッシュ映画では、フラッシュがマルチバースを駆け抜けることで新たなユニバースが誕生することになります。新たなユニバースということは、これからのDC映画の新たな世界観が誕生する、ということ。そう、世界観の仕切り直し映画なのです。繰り返しになりますが、『ザ・バットマン』もここから新たなバットマン世界が始まることを示唆しています。この先DC映画で「THE」がつくときは、「ここからなにかが変わる」という意志表示かもしれません。

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