『ザ・バットマン』コロナ禍史上2番目の滑り出しで北米興収1位を獲得 長尺ながら高評価に
ダークナイト、映画館に再臨。3月4日に待望の北米公開を迎えた『THE BATMAN―ザ・バットマン―』が、3月4日~6日の北米興行収入ランキングで堂々の第1位に輝いた。
本作は、クリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト』3部作以来、実に10年ぶりとなるバットマンの単独映画。3日間の興行収入は1億2850万ドルを記録し、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に続き、コロナ禍で史上2番目の初動成績となった。ワーナー・ブラザース作品としてはコロナ禍での最高記録、またマット・リーヴス監督作品としても過去最高の滑り出しとなっている。
また、『ザ・バットマン』はすでに海外74市場でも劇場公開を迎えており、3日間の海外興収は1億2000万ドルを記録。全世界累計のオープニング興収は2億4850万ドルとなった。これは事前の予想を上回る数字であり、ワーナーとしては『ジョーカー』(2019年)以来最高のヒット。ウクライナ侵攻を受け、ワーナーはロシアでの公開を見合わせているが、本作は中国でも公開される予定とあって、さらなる飛躍も期待される。
ワーナーにとって『ザ・バットマン』は、久々に“純粋な”劇場公開を迎えた作品だ。2020年12月、ワーナーの親会社AT&Tは、コロナ禍の影響を受けて2021年の公開作品をすべて劇場公開と同日にHBO Maxで配信する戦略を決定。しかし、この方針はことごとく裏目に出てしまい、いくつもの話題作が興行的不振に終わったどころか、クリエイターの不信を呼び、ワーナーの長年のパートナーだったクリストファー・ノーランが次回作では同社を離れるという結果さえ招いた。2021年のワーナー作品で最大のヒット作が『DUNE/デューン 砂の惑星』の1億812万ドルと『ゴジラvsコング』の1億91万ドルだったのだから、いくらコロナ禍とはいえ、いかに事態が深刻だったかがうかがえる。
それゆえに本作は大きな期待を寄せられていたわけだが、もちろんいくつかの懸念はあった。ひとつはコロナ禍の影響がいまだ大きく、感染者数こそ1月に比べると落ち着いたものの、映画館への客足が以前と同じほどに戻ったとは言いがたいこと。また2時間56分という長尺のために、気軽に観に行ける作品ではないことと、映画館での1日あたりの上映回数に制限がかかることだ。さらに作品のトーンも、ファミリー向けのマーベル映画とは異なり、バットマン映画史上最もダークと言えるスリラー/フィルムノワール調となった。
しかし、こうした要素は現実にはさほど問題にはならなかったことになる。米Rotten Tomatoesでは批評家スコア85%、観客スコア90%という高評価となったほか、観客の出口調査から満足度を評価する米CinemaScoreでも「A-」を獲得。実際の出口調査でも87%が好意的で、71%が「おすすめ」と回答した。