『ゴシップ』が切り込んだ“キャンセルカルチャー”のテーマ 物語は恋愛モードへ?

 ネット社会のいま、誰もが人を裁けるようになった。ひとたび、“悪”にカテゴライズされた人は、いくらでも叩いていいような扱いを受ける。過去の発言を取り上げて、言葉尻を拾って。むしろ、叩くことが“正義”だと言わんばかりに対象の人物を銃弾していく。あまりにも強い批判が起こると、職や社会的地位までもを奪われかねない。『ゴシップ#彼女が知りたい本当の〇〇』(フジテレビ系/以下『ゴシップ』)の第6話で描かれたのは、日本でも問題になりつつあるキャンセルカルチャーについてだ。

 世界的な注目を集める『第1回東京国際MANGA祭』で、人気漫画家・南雲タケシ(やついいちろう)が審査員を務めることになった。漫画オタクの一本真琴(石井杏奈)の反応から察するに、彼が審査員になることに疑問を抱いている人はいなかったはずだ。しかし、「中学のとき、学校近くの本屋で友達と一緒に万引きをしまくってた時期があって。そのせいで店は潰れちゃったんですけどね」と武勇伝のように語っていた記事が拡散されると、ネットはたちまち大炎上。10年前の軽口まで掘り起こされ、自宅前にまでアンチが押し寄せる事態に。

 “正義”って、何なのだろう。たしかに、南雲のやったことは“悪”だ。「それでも、才能があるからいいよね」で済まされることではない。だが、彼の娘にまで卵を投げつけたり、追いかけ回したりすることは“正義”だと言えるのだろうか。南雲が命を絶とうとするまでに追い詰めることも、そうだ。南雲の家に押しかけたYouTuberは、「俺は、“正義”のために批判するべきことを批判しているだけ」と言っていたが、批判も度を超すとただの暴力になってしまう。それに、自分のことを“正義”だと思っているのなら、なぜ警察を呼ばれた途端に逃げたのだろう。

 南雲の万引き事件は、本来は1対1の問題だった。かつて迷惑をかけてしまったことを反省したのなら、それを直接本人に伝えればいい。実際に、南雲が本屋に謝罪に行くと、店主は「あんたがやったこと、正直私はまだ許せん」と頭をコツンと叩いた。そこには、ネットの誹謗中傷とはまったくちがう愛が込められているのが分かる。そして、「でも、あんたの漫画は好きだ」と微笑んだ店主。そんな彼のためにも、復活して漫画を描き続けてほしい。

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