安達祐実だからこそ演じられた“横顔”の輝き “人”を感じる『湯あがりスケッチ』の温かさ

 日常の中にある何気ない喜び、小さなワクワク、発見。そんな些細な出来事が積み重なり、日常はやがて人生になっていくのだろう。ひかりTVのオリジナルドラマ『湯あがりスケッチ』の第2話は「銭湯」を通して「人」を描いた。

 柔らかい光や、ほっと一息つきたくなる湯けむり、アメ横の喧騒が映し出される中で、穂波(小川紗良)の日常は納豆を丁寧にかき混ぜるほどにささやかな幸福に溢れはじめていた。ドラマチックな展開やハッと息を呑むような事件が起こるわけでないが、ただ淡々と、丁寧に、穂波と彼女を取り巻く人々とのさりげない生活は続いていく。はじめはナンパだと思われていた劇作家志望の熊谷(森崎ウィン)とも、今やすっかり打ち解け、当たり前のように言葉を交わすまでに。人との交流が特別な出会いではなく、さりげない日々と地続きに描かれる様子に、自分の人生にもまだ見逃していた“煌めき”があるのではないかと思えてくる。穂波の日常は、徐々に余裕を取り戻していた。張り詰めていた頃の穂波から少し解放され、銭湯を巡り愛おしそうにスケッチする姿に、新たな夢を見つけた人間の活力を感じる。

 第2話は、穂波、熊谷、ゆづ葉(新谷ゆづみ)が話していた「横顔」の話を軸に、長峰との物語へと続く。前職を辞めタカラ湯で働くことになった穂波は銭湯のイラストを描くために寿湯を訪れるが、そこには、長峰(安達祐実)という日本を旅する女性との出会いがあった。長峰は離婚をきっかけに福岡から日本を北上し、新たな居場所を模索していた。仕事を辞め、新たな夢に向かっての一歩を踏み出す穂波にとって、長峰との出会いは“煌めき”である。

 長峰はスマホが原因で離婚し、スマホに振り回される生き方を嫌う。自らの意思で決意し、スマホを持たずにただ一人、日本を旅するのだ。穂波にとってそんな生き方は、清々しく魅力的に映っただろう。しかしスマホを持たない長峰は、今後も穂波と連絡を取り続ける手段を持っていないのだ。一期一会の出会い、そして次いつ会えるかわからない流動的な関係。湯けむりの中からふと現れる幻のような出会いは心をそっと包み込む。少しの切なさを感じながらも、人生とは様々な出来事が流動的にひしめきあうものなのかもしれないと納得もできた。2人の別れ際に長峰から感じた「横顔」の印象を大切なものとして、穂波はタカラ湯へと持ち帰る。

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