早乙女太一が体現した『カムカムエヴリバディ』トミーの情熱 京都編への登場は?

 るい(深津絵里)と錠一郎(オダギリジョー)の京都という新天地での生活が始まったNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。第13週のはじめでは、東京でジャズトランペットのアルバムをレコーディングしていたジョーこと錠一郎(オダギリジョー)が大阪に帰ってきた際、「何してんねん!!」といち早く駆けつけたのがトミー(早乙女太一)だった。しかし、京都に移ってからは彼は姿を見せていない。

 第58話では、ジョーから事情を聞いたトミーが、ステージ上にもかかわらず、お酒を持ち込み、落ち込んだような様子を見せながら寂しげな曲を吹いていた。“ジョーの次”となる人材を探しにきたという奈々(佐々木希)に声をかけられても、「(ジョーのことを)最後まで責任とれや!」と食ってかかる。誰よりも関西一のトランペッターになることに意欲を見せていたトミーなのだから、ここは、「次は俺や!」と喜んでもいいはずなのに。クールなようでいて、とりわけ仲間のことになると感情がむき出しになってしまうところは、トミーの魅力的な一面のひとつである。

 思い返すと、トミーはいつでもジョーのことをアシストしてきた。トミーはジョーの良き理解者なのだ。ジョーのトランペットの魅力を理解しているからこそ、「関西ジャズトランペッターニューセッション」に出ることを渋るジョーに突っかかり、本番前におろおろしている姿を見ると、発破をかける。それに対するジョーの返答はいつもやわらかで穏やかなのだが、トミーは満足そうな表情を浮かべる。きっとその言葉の裏にある情熱を誰よりも知っているのだ。

 トミーを演じた早乙女太一は劇団員の両親の下に生まれ、初舞台は4歳の時。デビュー当時は、“流し目王子”と呼ばれ、視線やまばたきでの繊細な表現を得意としてきた。しかし近年は、『BLEACH 死神代行篇』(2018年)での阿散井恋次役や『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)で暴力団・尾谷組の組員、花田優を演じるなど、オラオラ系の男くさい役も。何事にも動じない胆力と滲み出るような色気を感じさせるトミーは、年々、演技の幅を広げてきた早乙女の今の集大成といえるかもしれない。

『BLEACH』(c)久保帯人/集英社 (c)2018 映画「BLEACH」製作委員会

 『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)出演発表時には「トミー!」とネット上で話題になるほど、ドラマファンから親しまれていた早乙女。彼はオダギリジョー、深津絵里、市川実日子の”いつものメンバー”から見れば、実年齢は1番年下。キャリアもそうそうたる面々の中で、生意気でちょっと偉そうなトミーを演じるのは、かなりのプレッシャーだっただろう。それでも、ぶっきらぼうな言葉の中に優しさが滲んでいる、そんな役は彼にしかできなかった。そう思えるくらい早乙女は役に馴染んでいた。

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