オダギリジョー、浅野忠信、西島秀俊 “映画俳優”が朝ドラにもたらす深度

 朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)での好演が話題のオダギリジョー。ヒロインの相手役を演じる彼が、いま物語の展開を盛り上げているところだ。そんなオダギリは俳優として数多くの出演作を持ち、第一線に立ち続けてきた存在だが、朝ドラに登場するのはこれが初。彼が“国民的ドラマ”に登場するのが意外だったという方は多いのではないだろうか。ドラマへの出演は決して少なくないが、やはりオダギリは“映画俳優”の印象が極めて強い。前作『おかえりモネ』には浅野忠信や西島秀俊といった映画俳優が出演していたが、彼らの登場は朝ドラに何をもたらしているのか。

 今作『カムカムエヴリバディ』でオダギリが演じる“ジョー”こと大月錠一郎は、先に記しているようにヒロインの相手役。となれば当然、出番は多く、作品における重要度は大きい。新人俳優がヒロインを務めた場合、その相手役もフレッシュな若手俳優が担うことが多い朝ドラだが、今作における現在のヒロインは深津絵里である。彼女の相手役となれば、それ相応の者が配されなければならないだろう。なぜならば、もはやベテランの域に立つ深津だが、意外にもこれが朝ドラ初出演なのだ。相手役を演じる者にも意外性が必要だったのではないだろうか。そこで選ばれたのが、映画俳優・オダギリジョーというわけである。

『花束みたいな恋をした』(c)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

 まず、映画のフィールドにおけるオダギリの活躍を簡単に振り返ってみたい。昨年公開されたのは、『花束みたいな恋をした』『茜色に焼かれる』『名も無い日』『アジアの天使』の4作品。いずれも“大作映画”とは異なる作品だ。小品ながらも多くの観客の共感を呼び大ヒットを記録し、本年度の第45回日本アカデミー賞にも絡むこととなった『花束みたいな恋をした』を除くと、他の3作品を知らない方はいるのではないかと思う。『あずみ』(2003年)や『SHINOBI』(2005年)、『THE 有頂天ホテル』(2006年)に『渇き。』(2014年)などのような広く大衆に知られる、いわば“大作”に分類される映画作品にも多々出演はしているが、オダギリは“ミニシアター系”と呼ばれるパーソナルな作品への出演の方が圧倒的に多い。大衆向けというよりも、どちらかというと映画ファン向けの作品である。

『茜色に焼かれる』(c)2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ

 これは前クールの朝ドラ『おかえりモネ』に出演していた浅野忠信や西島秀俊にもいえること。両者ともに近年は、大作や話題作への出演の方が目立つが、これまでに膨大な数のミニシアター系の作品に出演し、映画ファンに愛されてきたのだ。オダギリをはじめ三者ともに、海外の監督からも愛されていることや、日本のマーケットだけでなく、国際的に評価される芸術性の高い作品に多く参加していることも共通点といえるだろう。テレビドラマでの活躍もそれぞれにあるのだが、功績としては映画での方が大きい。西島は『おかえりモネ』が3度目の朝ドラ出演だったが、放送時期に公開された『ドライブ・マイ・カー』とはまったく演技の質感が異なるものだった。

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