ロレンツォ・マトッティ監督が影響を受けたアニメと映画は? 『クマ王国の物語』制作背景

アニメが持っている魔法

ーー本作はヨーロッパ的なグラフィックで色も独特です。マットで落ち着いた質感でありながらカラフル。日本やアメリカのアニメとは違った色彩感覚があって、ヨーロッパの古い絵本のような味わいがあります。

マトッティ:私はイラストレイターやバンドデシネのキャリアを通じて、大胆な色使いをするように心掛けてきました、色で物事をよりよく語ることができる、という信念が私にはあるんです。色というのはいまだにミステリーなところがありますが、ひとつ言えるのは、色は人にエネルギーを与えてくれます。だから、カラフルな色を使うことを怖がってはいけません。色を使うことでエモーショナルなものを充分に表現できるのです。今回の作品でも色が持つ力を引き出そうとしました。色がポジティヴなエネルギーを生み出して、映画でカラフルな色をたっぷり見た観客は、映画からエネルギーを受け取って劇場から出て行くんじゃないかと思います。私から見ると、今のアメリカのアニメ映画の色は良くない。とても冷たいしモダンすぎる。私が好きなのはディズニーの初期、今よりもっと自由に色が使えた時代の作品です。今のアニメ映画の色の使い方には、自由さや冒険が足りない気がします。

ーーでは、あなたがグラフィックに魅力を感じるアニメ作品とはどんなものでしょう。

マトッティ:たくさんあります。若い頃はアニメや映画をいろいろ観ましたからね。例えばディズニー映画の『ファンタジア』。ビートルズの『イエロー・サブマリン』、ローラン・トポールの『ファンタスティック・プラネット』、『ポパイ』。もちろん、宮崎駿の『もののけ姫』や『となりのトトロ』。宮崎はアニメを通して物語を語ることができる素晴らしい監督です。実写映画からも影響を受けました。ヴェルナー・ヘルツォークをはじめとする70年代のドイツ映画、アンドレイ・タルコフスキー、フェデリコ・フェリーニ。フェリーニはイタリアの文化の一部です。『クマ王国の物語』はフェリーニから大きな影響を受けています。いま、いちばん好きな映画監督はウォン・カーウァイです。『花様年華』で見せた美意識も素晴らしかった。彼とは一緒に仕事をしたことがありますが、幸いなことに彼も私の作品を気に入ってくれました。『クマ王国の物語』はたくさんのアニメや映画の影響から生まれた作品なのです。

ーーあなたはイラスト、バンドデシネ、アニメなど、様々な領域で仕事をしていますが、そんななかでアニメの魅力とはどんなところでしょう。

マトッティ:アニメーションはすごくポエティックで、現実とはかけ離れた世界観を作り出すことができる。そして、メタモルフォーゼ(変身)を自由自在にできる。形が絶えず変わっていく様子を描くことができるのもアニメーションの魅力です。現実世界で常に形が変わって行くのは蝶々くらいしかいませんから。そして、小石に生命を与えることができる。生命のないものが動き出したり、自由に形を変えたりする。それがアニメが持っている魔法だと思いますね。

■公開情報
『シチリアを征服したクマ王国の物語』
1月14日(金)より新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺にて公開
監督・グラフィックデザイン:ロレンツォ・マトッティ
脚本:トマ・ビデガン、ジャン=リュック・フロマンタル、ロレンツォ・マトッティ
日本語吹替版キャスト:柄本佑、伊藤沙莉、リリー・フランキー、加藤⻁ノ介、寺島惇太、堀内賢雄
制作プロダクション:プリマ・リネア・プロダクションズ、Pathe France 3 Cinema Indigo Film with Rai Cinema
アニメーション・スタジオ:3.0 studio
原作:ディーノ・ブッツァーティ『シチリアを征服したクマ王国の物語』(福音館書店刊)
提供:トムス・エンタテインメント、ミラクルヴォイス
配給:ミラクルヴォイス
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
フランス・イタリア合作/2019年/カラー/82分/ビスタサイズ/5.1ch/フランス語/原題:LA FAMEUSE INVASION DES OURS EN SICILE/日本語字幕:井村千瑞
(c)2019 PRIMA LINEA PRODUCTIONS – PATHE FILMS – FRANCE 3 CINEMA – INDIGO FILM
公式サイト:https://kuma-kingdom.com/
公式Twitter:@kuma_kingdomJPN

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