『スパイダーマンNWH』年越しも圧倒的 一方、『 マトリックス』は配信戦略が裏目に?

 新年あけましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願いいたします。

 2022年初の北米興行収入ランキングは、越年の週末となった2021年12月31日~2022年1月2日のデータから。首位の座は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が3週目も譲らず、圧倒的な強さを見せつけた。新作映画はほとんど封切られず、先週までに公開されたホリデーシーズンの大作が熾烈な争いを繰り広げ、やや波乱含みの結果となっている。

 第1位の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は3日間で5270万ドルを稼ぎ出し、前週の8150万ドルから37.7%減。1週目から2週目はおよそ7割減だったが、大晦日から新年にかけて観客の興味を集めることに成功し、下落率にブレーキをかけたことになる。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(c)2021 CTMG. (c) & TM 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の北米累計興収は6億989万ドルで、『インクレディブル・ファミリー』(2018年)を抜いて歴代第10位。海外累計興収は7億5900万ドルで、全世界累計興収は13億6889万ドルとなっている。すでに本作はソニー・ピクチャーズ史上最高の世界興収記録を達成し、『ブラックパンサー』(2018年)を超えて歴代第12位となった。

 第2位は『SING/シング:ネクストステージ』の1960万ドルで、なんと前週比わずか12.2%減という粘りを見せ、人気ファミリームービーとしての底力を示した。第3位は『キングスマン:ファースト・エージェント』の450万ドルで、前週の第4位からランクアップ。こちらも前週比23.9%減と同じく健闘している。第4位はザッカリー・リーヴァイ主演の伝記映画『American Underdog(原題)』の407万ドルで、前週の第5位から上昇し、前週からの下落率も-30.8%。強力なライバルに囲まれる中、米Rotten Tomatoesでは観客スコア98%という好評ぶりで客足を伸ばしている。

『マトリックス レザレクションズ』(c)2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

 そんな中、最も苦戦しているのが第5位の『マトリックス レザレクションズ』だ。3日間の興収成績は382万ドルで、前週から68.1%減という大幅な下落となった。北米累計興収は3090万ドルなので、『キングスマン:ファースト・エージェント』『American Underdog』をやや引き離してはいるものの、もともとワーナー・ブラザースは1週目で4000万ドル超えを見込んでいたのだから厳しい結果と言わざるをえない。

 苦しい状況の背景には、劇場公開日にHBO Maxで同時配信するというワーナーの独自戦略がある。コロナ禍で映画館の営業の見通しが立たない中、ワーナーはいち早く配信にシフトすることを決定したわけだが、これは大きな裏目に出た。少なくないクリエイターの不信を招いたうえ、数々の注目作が2週目に大きな興収下落を示したのである。『DUNE/デューン 砂の惑星』は−62%、『モータルコンバット』は−73%、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』は−72%。約1年前、同じ戦略を採った『ワンダーウーマン 1984』(2020年)も2週目には−68%という結果だったから、やはりHBO Maxが劇場興行の足を引っ張ったのだ。『マトリックス レザレクションズ』は口コミの賛否両論も一因とみられているが、批評家の評価がより厳しい『キングスマン:ファースト・エージェント』が興行的には上昇傾向にあることを鑑みると、やはり配信戦略の影響が大きいと考えるべきだろう。

関連記事