『最愛』で思い出す『Nのために』 コアなドラマファンから支持が厚い理由は?

 人生を狂わすほどの恋を、私はしたことがあるだろうか。それでも幸せだと思えるほど、誰かを愛したことがあるだろうか。『最愛』(TBS系)を観ながら、そう自分の心に問いかける。本作の事件の全貌はまだ明かされていないが、誰もが“最愛”の存在のために動いているのは間違いないだろう。人を愛するというのは、楽しいだけではない。もしかすると、苦しいことの方が多いのかもしれない。それでも、ほんの僅かでも輝く時間をともに過ごせたなら。その思い出は、永遠に“お守り”として輝き続ける。梨央(吉高由里子)が、大輝(松下洸平)と過ごした青春を支えに生き抜いてきたように。

 本作を観ていると、『Nのために』(TBS系)の主人公・杉下(榮倉奈々)の言葉を思い出す。「(究極の愛とは)罪の共有。共犯じゃなくて、共有。誰にも知られずに、相手の罪を自分が半分引き受けること。誰にもっていうのは、もちろん相手にも。罪を引き受け、黙って身を引く」ーー。『最愛』の初回放送時、『Nのために』がSNS上でトレンド入りを果たした所以は、ここにあると思う。どちらも、“究極の愛”をテーマにしており、愛ゆえに罪を犯してしまった人々の心情を、繊細に描いているのだ。

 『Nのために』は『最愛』と同じく、新井順子プロデューサー×塚原あゆ子監督の“黄金コンビ”が手掛けた作品である。主人公の杉下を演じたのは、榮倉奈々。裕福で何不自由ない生活を送ってきた彼女の人生は、愛人を作った父・晋(光石研)が豹変したことで、狂い始める。メタ的思考ではあるが、『Nのために』で最低な父親を演じた光石研が、『最愛』では良き父を好演している対比がすごい。

 父に家を追い出され、母は精神不安定に。苦しむ杉下を支えたのが、同級生の成瀬(窪田正孝)だった。そんな彼と、罪を共有することを望んだ杉下の行動がきっかけで、“放火事件”が複雑な方向へと絡んでいく。そして、杉下が大学生の時に起きたセレブ夫妻殺害事件。その現場に居合わせたのは、それぞれの“Nのために”集まったメンバーたちだったーー。2014年に放送された『Nのために』は、いまだに根強い人気を集めている。とくに、コアなドラマファンからの支持が厚い。

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