『アバランチ』高橋メアリージュン演じるリナの復讐とは 暗闇の先に見出した光

 流れに逆行することが社会への反逆だとしたら、復讐は狂気の沙汰だ。『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)第3話で描かれた明石リナ(高橋メアリージュン)の復讐は、過去への退行ではなく暗闇の先に光を見出そうとするものだった。

 首相周辺の不正を暴露してきたアバランチ。山守(木村佳乃)のターゲットは内閣官房副長官の大山(渡部篤郎)。周到に痕跡を消す大山の情報をつかむため、リナは首相をはじめ各界の有力者が通う高級会員制サロン「悠源館」に潜入する。悠源館ではホステスの不審死が続いており、リナには胸に秘めた思いがあった。

 第3話で山守たちが手に入れようとしていたのは通称「Kファイル」。悠源館の主・黄月蘭子(国生さゆり)の厳重な管理の下、密約や談合などの極秘情報が記録され、ひそかに首相周辺にデータが渡っていた。先般行われた国政選挙でも明らかだったように、権力を持った人間との駆け引きは不可避的に情報戦の様相を呈する。人は感情によって動くが、その感情を左右するのが情報であり、出し方次第で状況が一変するからだ。その事実が先鋭化されるのが政治の現場である。

 アバランチがしようとしていることの本質も、詰まるところ情報戦といえる。「この動画を見ている全ての人間に委ねる」。法律を離れて私的制裁を加えれば暴力の連鎖が起き、手をこまねいたままでは不正はなくならない。それならどうするかという問題意識から、情報のなだれを起こすことが構想される。人間は知ろうとする動物であり、誰も真実には抗えない。アノニマスな一般市民に正義をゆだねる逆転の発想で、感情やアクションをはぎとったところに物語の磁場を見出した。

 高橋メアリージュン演じるリナ。あるいは情報を盗むだけなら、他にやりようがあったかもしれない。しかし、少なくともリナにとって、それは1人で行かなくてはならない場所だった。喪失の重さと捉えどころのない軽さ、相反する属性を持つ感情は、質量のない情報と対照的だ。特殊工作部隊の元レンジャーにして格闘技に秀でたリナは、重みに耐え、空虚な気持ちをやり過ごしながら、アウトロー集団の一員として任務を遂行してきた。が、それがかなわない時もある。

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