エミー賞席巻『ザ・クラウン』の真価とは 未だ根強いダイアナ人気が話題に一役買った?

 Netflixにとって記念すべき一夜となった。第73回エミー賞で『ザ・クラウン』が作品賞ほか主要部門を総なめし、計11部門を獲得する大勝となったのだ。

 またこの夜、大トリを飾ったリミテッドシリーズ部門でも『クイーンズ・ギャンビット』が作品賞を制し、こちらも計11部門で圧勝。スタジオ別で合計44の最多受賞となり、ライバルHBOの19を大きく引き離した。Netflixはエミー賞、アカデミー賞ともに例年、多くのノミネートを輩出して急速に存在感を強めてきたが、反して作品賞をはじめとする主要部門での受賞はかなわず、まだまだ外様扱いの感は否めなかった。コロナ禍で映画の公開が見送られ、作品製作がストップする中、ハリウッドを支え続けたNetflixがようやく認められた格好だ。

『ザ・クラウン』Netflixにて配信中

 『ザ・クラウン』は下馬評で有力と言われたチャールズ皇太子役ジョシュ・オコナーの主演男優賞、サッチャー首相役ジリアン・アンダーソンの助演女優賞のほか、エリザベス女王を演じたオリヴィア・コールマンの主演女優賞、フィリップ殿下役トビアス・メンジーズの助演男優賞も獲得し、演技部門を独占した。シーズンの主役が女王からチャールズとダイアナに代わり、明らかに演技的見せ場が少なくなったコールマンらの受賞にはNetflixが悲願の作品賞獲得に向けて猛チャージをかけたことが伺える(とはいえ助演男優賞は投票期間終了後に急逝した『ラヴクラフトカントリー』のマイケル・ケネス・ウィリアムズが相応しかった。傑出した名演だった)。

 今回受賞となったシーズン4ではチャールズ皇太子とダイアナの出会い、世界を席巻したロイヤルウェディング、そして泥沼の結婚生活が描かれる。ゴシップ的な興味を煽る構成はこれまでのシーズンで最も虚実が怪しい作劇であり、未だ根強いダイアナ人気が話題に一役買ったのは間違いない。

『ザ・クラウン』Netflixにて配信中

 一方、1980年代に大量の失業者を生み出し、イギリスを深刻な不況に追いやったサッチャー政権を通じて、規範なき現代政治を批評した所にこそ本作の真価がある。“自助”を説くサッチャーの姿には日本の視聴者こそ思う所も多いのではないか。演じるジリアン・アンダーソンは懐かしや『Xファイル』のスカリー捜査官役から22年ぶりの受賞となった。舞台女優として研鑽を積み、現在53歳の円熟である。サッチャー役で見せた怪演はシリーズ最強のヴィランとも言うべき存在感だった。

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