高橋一生主演『岸辺露伴は動かない』なぜ成功?  俳優の演技を通して変換された映像表現

 同時に本作は、スピンオフの要素を極力見せないことで『ジョジョ』を知らない視聴者も楽しめるものとなっている。一番の違いは「スタンド」を「ギフト」と呼んでいることだが、物語面での改変も多く、例えば「D.N.A」は漫画では『ジョジョ』の山崎由花子がゲスト出演しているのだが、ドラマでは泉が彼女の役割を果たしている。

 このようにドラマ版『岸辺露伴』は、アニメ版『ジョジョ』とは真逆のアプローチで展開されている。そうでありながら荒木飛呂彦ワールドの映像化に成功しているのは、菊地成孔が担当する劇伴や、カメラの揺れやアンバランスなレイアウトといった不安を煽る演出によるところが大きい。何より出演俳優の怪演が、荒木飛呂彦ワールドのグルーヴを生み出している。中でも「くしゃがら」で志士十五を演じた森山未來と、露伴を演じる高橋一生のかけあいは圧巻だった。二人とも個性の強い俳優で、他のドラマでは「過剰すぎる」と思うことも多いのだが、どれだけケレン味たっぷりに演じても違和感がないのが、荒木飛呂彦ワールドの懐の広さだと言えよう。

 なお「くしゃがら」はノベライズ版『岸辺露伴』に収録された物語で、荒木飛呂彦ではなく小説家の北國ばらっどが執筆している。そのため漫画にはなっていないのだが、森山未來の芝居を見ていると存在しないはずの荒木飛呂彦の絵が目に浮かぶ。それくらい彼の演技はハマっていた。

 荒木飛呂彦のキャラクターはポーズや台詞回しが過剰で、とても芝居がかっている。つまり、とても演劇的なのだが、だからこそ俳優のポテンシャルが極限まで引き出される。今年の年末に放送される4〜6話ではゲスト俳優として、笠松将、市川猿之助、内田理央の出演が決まっている。シリーズが進めば、俳優の怪演を楽しむドラマとして定着していくことは間違えないだろう。原作をそのまま再現するのではなく、俳優の演技を通してドラマならではの映像表現に変換できたからこそ『岸辺露伴』は成功したのだ。

■放送情報
『岸辺露伴は動かない』
NHK総合にて、第4話〜第6話12月放送予定
出演:高橋一生、飯豊まりえ
第4話ゲスト:笠松将
第5話ゲスト:市川猿之助
第6話ゲスト:内田理央
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない』
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔
演出:渡辺一貴
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
制作統括:鈴木貴靖、土橋圭介、平賀大介
制 作:NHK エンタープライズ
制作・著作:NHK、ピクス
(c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
(c)NHK・PICS

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