『ヴェノム』続編で注目 “最強最悪のヴィラン”カーネイジの恐怖を原作コミックから分析

 2018年に公開され、ヒットを記録した映画『ヴェノム』の続編、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の公開がアメリカではいよいよ9月に迫ってきた(日本は今年公開予定)。予告編や最新情報も次々と解禁され、ヴィランであるカーネイジも注目を集めている。しかし映画版のカーネイジは、原作コミックとは少し違っているようだ。今回はその違いを、ヴェノムとも比較しながら見ていこう。

コミックでのカーネイジの位置づけ

 カーネイジはご存知の通り、ヴェノムと同じシンビオート共生体だ。『スパイダーマン』シリーズをはじめとするコミックに登場する、最凶のヴィランとして知られている。コミックではエディ・ブロックが刑務所に収容されていた際、カーネイジの寄主となる連続殺人鬼クレタス・キャサディに出会う。そしてエディがヴェノムの力を使って脱獄したとき、そうとは知らずヴェノムの子を置いてきてしまった。それがキャサディの血液と結びつき、カーネイジとなったのだ。シンビオートは寄主を変えたり、次世代が誕生すると前のシンビオートの能力を引き継ぎ増強するため、世代が下るほど強くなる。残忍な性格のキャサディはカーネイジと完全な共生体となり、ヴェノムを凌ぐ凶悪な存在になった。

 コミックのヴェノムは最初にスパイダーマンに寄生していたため、スパイダーウェブのような糸を出したり、スパイダーセンスのように危険を感知する能力がある。さらにスパイダーセンスを無効化することも可能だ。カーネイジもこれらの能力を引き継いでいる。しかし両者が決定的に違ったのは、その寄主の性格だ。多少利己的な部分はあるものの基本的に善良なエディに寄生したヴェノムは、自分なりのルールやプライドを持ってダークヒーローとなった。しかしサイコパスで連続殺人鬼のキャサディと一体化したカーネイジは、殺戮を好む残虐さで最強最悪のヴィランになったのだ。その強さは桁違いで、スパイダーマン1人では全く歯が立たず、ヴェノムと共闘することでようやく倒すことができた。スパイダーマンにとっては、トラウマレベルの最悪の敵だったと言えるだろう。

ビジュアルの変化と新たに加わった能力とは

 予告編などを見ると、カーネイジのビジュアルはコミックと少し違うことがわかる。コミックのカーネイジは、赤いボディに黒い筋のような模様が入った姿で描かれることが多い。しかし映画版ではその黒い筋がない、もしくは薄いのか、全体的にほとんど赤で、筋肉解剖模型のような不気味さを醸し出している。

『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』予告3 2021年 全国ロードショー

 また監督を務めるアンディ・サーキスは、IGNのインタビューで本作のカーネイジには新たな能力を加えたことを明らかにした。その1つは“霧になる”というものだ。カーネイジはもともとヴェノムと違って、細胞の一部を斧やナイフのような固形の武器に変えることができる。映画では、さらにその形態を自由に変えられるというのだ。予告編では刑務所内を歩くカーネイジに向かって刑務官が発砲するシーンがあるが、腹を空洞にして弾を避けているように見える。これでは物理攻撃が全く効かない。さらに“霧”となると、その姿をはっきりと見ることもできないだろう。またカーネイジは、“受けたエネルギーを、そのまま相手に返すことができる”という。これは具体的にはどういうことなのか。シールドのようなもので跳ね返すとは考えにくいが、例えば『ブラックパンサー』(2018年)のスーツのようなイメージだろうか。あれは相手から受けたエネルギーを一旦吸収し、次に攻撃されたときに同じ量のエネルギーを返すというものだったが、カーネイジの場合はそもそも物理攻撃が効かなそうなので、吸収することもなく文字どおり“そのまま”返すことになりそうだ。それがどんな仕掛けになっているのか、あるいはなにかの比喩なのか、期待しておこう。

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