アニメ『僕のヒーローアカデミア』海外での反応を検証 5期の評価が低い理由とは？
シーズン5の評価が低い理由
そこで気になるのが現在放送中のシーズン5の評価なのだが、これが恐らく残念ながら最も低い結果になりそう。その原因は、先に紹介した「ペーシング」によるものが大きい。本シーズンはこれまでと違って、大きな動きが一旦落ち着き、学園生活に戻った主人公や1年A組のクラスメイトたちがB組と合同戦闘訓練をする。主にこれまでちゃんと出てこなかったB組メンツの紹介とA組の個性の成長、そしてデクの「ワン・フォー・オール」の開花がテーマとなっているわけだが、物語としてのペースは遅い。というより、他に比べて地味である。「キャラクターの熱狂的なファンでなければ飽きてしまう」という意見がTwitter上で散見した。一方で、本作の大ファンであり多くのアニメのリアクションを投稿する人気YouTuberグループ「YaBoyRoshi」のリーダーRoshiは、自分が原作読者であることを前提に「漫画ではこの章が少し退屈だからあまり好きじゃなかったけど 、コミックでわかりづらく描かれていた個性の動きや表現がアニメでわかりやすくなっていて楽しめている」ともコメントしている。
ただ、シーズン5が不評である最大の理由は合同訓練編のあと、MVA編を完全にカットして冬休みインターン編を始めたことにある。これに海外ファンは“非常に”怒っているのだ。敵（ヴィラン）連合 vs 異能解放軍編、通称MVA編は、キャラクター人気の高いヴィラン連合を主人公にして話が進むこともあり、それを飛ばしてインターン編で異能解放軍とともに行動するヴィラン連合が映された際に「その過程で起きた出来事を描かないと、本当の意味で彼らがそこにいる意味がわからない」と反対的な意見が多く見受けられた。さらに、アニメオリジナルとして放送された16話「お久しぶりですセルキーさん」が、公開を控えた『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』のヴィラン紹介をふまえた前日譚的エピソードだったことから、「これ（映画の宣伝）がしたくてMVAをカットしたのか」、「このエピソードはOVA収録であるべき」と、さらに批判の声は高まった。
先にも紹介したYouTuberグループ「YaBoyRoshi」のリーダーRoshiは、こういったアニオリ回（海外では「filler（埋める回）として親しまれる）が、「連載とのスケジュール合わせだから、アニメではよくある仕方ないこと」とコメントしつつ、やはり「僕らはMVAが観たい」とコメントを残している。余談だが、彼らのこの16話へのリアクション動画のコメント欄には、同じようにMVAを求める視聴者の訴えが多く投稿されているので気になる方は見に行ってほしい。
とはいえ、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』の期待は海外ファンの間でも高まっている。先日生配信もされた本作のワールドファンミーティングは、その名の通り英語の同時通訳が入って進行されたこともあり、日本のファンと同じように海外ファンも楽しめた。6月に開催された『呪術廻戦』の「じゅじゅフェス2021」や、MAPPAスタジオの周年記念イベントしかりコロナの影響で最近アニメ系のイベントの多くが同時配信される形をとっている。海外ファンも（時には日本のファンよりも）コメント欄に浮上するなどして楽しんでいるが、通訳や字幕もなく内容がわからないというネックがあった。その点、『ヒロアカ』は北米での人気を考えてこういった施策に取り組んでいるあたり、しっかり海外ファンを意識してファンダムを築いているように思える。これに倣い、今後もよりアニメ宣伝は海外マーケットを考えたやり方が増えていくかもしれない。まさに全世界待望の『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』は8月6日より全国公開だ。
参照
・Rotten Tomatoes
・My Hero Academia: superhero fun without decades of backstory
・YaBoyRoshi
■公開情報
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』
8月6日（金）全国東宝系にてロードショー
声の出演：山下大輝、岡本信彦、梶裕貴、稲田徹、中村悠一、三宅健太、中井和哉、吉沢亮ほか
原作・総監修・キャラクター原案：堀越耕平（集英社『週刊少年ジャンプ』連載）
監督：長崎健司
脚本：黒田洋介
キャラクターデザイン：馬越嘉彦
配給：東宝
(c)2021「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (c)堀越耕平／集英社
公式サイト：https://heroaca-movie.com/
