『漂着者』ヘミングウェイは“あちら側”の人間だった? 陰謀論的展開見せた第2話

 歴史上で預言者と呼ばれた人々は、何を知っていたのだろうか? 全能の存在のような彼らは本当は何も知っておらず、それゆえ未来を知ることができたのかもしれない。「過去の記憶がないからこそ事実を事実として受け入れられる」。『漂着者』(テレビ朝日系)第2話は、ヘミングウェイ(斎藤工)の予知能力への手がかりが示された。

 病院の窓から身投げしたヘミングウェイは奇跡的に一命を取り留め、しあわせの鐘の家へ移る。ローゼン岸本(野間口徹)が代表を務める鐘の家は、生活困窮者を保護するNPO法人。「新しい時代の自給自足のコミュニティ」で人々は穏やかに暮らしているように見えた。

 謎に満ちていたヘミングウェイの周辺は、岸本の登場によって一気に陰謀論的な様相を帯びてきた。映画『ミッドサマー』を連想させる描写も散りばめられた鐘の家は、公安の監視対象になっていた。県警の柴田(生瀬勝久)と野間(戸塚純貴)が聞き出したところでは、鐘の家には仮想通貨のブロックチェーンから資金が流れこんでいた。また1カ月前に某国の工作船と見られる漁船が座礁し、乗組員1名の足取りがつかめていないという。公安はそれがヘミングウェイではないかと考えていた。

 ヘミングウェイはローゼンと面識がなく、ローゼンによると「こちら側であなたにあった人間はございません」。ローゼンは「1400年以上お待ちしていたのです」と口にする。「未来への希望」というヘミングウェイの出現は、1400年前に何者かによって予言されていたことになる。ローゼンは「世界はこちら側とあちら側しかない」と語っており、ヘミングウェイは「あちら側」から「こちら側」へ渡ってきた人間と解釈できる。

 これだけでもすでにお腹いっぱいだが、死んだ後宮教授(越村公一)が遺した数式の秘密も判明。遺伝子工学の権威だった後宮は、人間の第6感に関する特殊な遺伝子を研究していた。病室の壁いっぱいに残された数式や元素記号を見たヘミングウェイは、ペンを走らせ、後宮が解けなかった遺伝子の配列を完成させる。配列は翼を広げた鳥のような形で、ヘミングウェイの足首にある紋様と一致していた。国家的陰謀の影はここにもあって、旧ソ連が軍事利用目的で研究し、後宮もかつてモスクワに留学していた。

 人物に関する謎を提示するのはミステリーの王道だ。主人公の属性が一切伏せられている今作は、秋元康原案・企画の『あなたの番です』(日本テレビ系)に通じるものがあり、積極的に考察を呼びかける点やSNSの反響を意識している点も共通する。「謎」が手の届かないところに仕掛けられているのも特徴だ。某国の工作船や旧ソ連の国家機密は一般人の手の届かない場所にあり、水面下の資金流入はインターネット検索からはわからない。

関連記事