『グーニーズ』が転換期となったジュブナイル映画の系譜 なぜ子供の物語にホラーが多い?

『グーニーズ』(c)Warner Bros. Entertainment Inc.

 リチャード・ドナーが監督を務め、アンブリンが製作、スティーヴン・スピルバーグを筆頭にフランク・マーシャル、キャスリーン・ケネディが製作総指揮を務めた本作は、そのメンツからもわかるようにエンターテインメントとして楽しい、子供がわくわくする作品となった。洞窟の仕掛けや財宝の秘宝も含めて胸躍る設定が多く、明るくてアップテンポなのが印象的ではあるものの、『グーニーズ』も決して本質が変わっているわけではない。財宝探しの発端となる、ウォルシュ家の立ち退き問題という大人がどうにかしなければいけない問題を、子供たちが彼ら抜きに解決しようとする。なにより、その過程の旅路ではやはりマイキーの兄ブランドンと彼が想いを寄せるチアリーダーのアンドレア、その女友達のステファニーと少し年上の子供が介入し、グーニーズの面倒を見ることで擬似家族の形態が出来上がっている。面白いのは、アンドレアが間違えてキスしたり、財宝を探す本当の目的や、片目のウィリーに対する考えと尊敬の意を誰よりも深く捉えていたりする意味でも、実はブランドンよりマイキーの方がチームを率いる大人の立場を担っていることでもあるけれど。彼らが劇中そのチャンスがあっても大人に助けを呼ばず、自分たちの手で物事を解決すべきだと話すシーンがある。それはこれまでのジュブナイル映画の系譜のうえでのステートメントでもあるのだ。彼らもまた、大人を抜きに大人たちと戦う。それに加え、ギャング団のフラッテリー家の末っ子、ロトニーが仲間になる流れも、子供たちが“大人に抑制された子供”を解放する象徴的なイベントである。しっかり、これまでのジュブナイル作品の中で描かれていたメッセージと同じことを描きつつも『グーニーズ』が観やすい理由……エンターテインメント性の在処は、これまでの作品にはなかったラストの海岸での“家族が子供たちを愛している”という描写にある気がする。

『グーニーズ』(c)Warner Bros. Entertainment Inc.

 その後、『ドラキュリアン』(名作中の名作)や『ロストボーイ』(『スタンド・バイ・ミー』の不良役で輝いたキーファー・サザーランドがドラキュラになって、テディ役のコリー・フェルドマンがそれに立ち向かうという面白い映画)など『グーニーズ』が提唱したエンタメ性の高いジュブナイル映画が増えた。そのエンタメ性の志向が、子供たちが立ち向かうべきものを社会であったり、大人というビターなものではなく、代わりにモンスターやエイリアンに変換している。そして両親の片方がいなかったり、喧嘩したりしていても子供達が危機を乗り越えた後では愛を伝えながら彼らを強く抱きしめるように。それでも基本的に本質は変わらず、子供たちは戦い続けてきた。『IT/イット』のペニーワイズや『SUPER8/スーパーエイト』の宇宙人のように具現化された、“大人たちが存在を信じない”者たちに抗い続けた。大人たちからの不信感そのものとも。それがわかるから、ジュブナイル映画には単純なノスタルジー以上に、かけがえのない本質に立ち返られる魅力があるのではないだろうか。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。InstagramTwitter

■配信情報
『サマー・オブ・84』
Netflixほかにて配信中
監督:RKSS(フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル)
脚本:マット・レスリー、スティーブン・J・スミス 
製作:ショーン・ウィリアムソン、ジェイムソン・パーカー、マット・レスリー、ヴァン・トフラー、コーディ・ジーグ
出演:グラハム・バーチャー、ジュダ・ルイス、ティエラ・スコビー、リッチ・ソマー
2017年/カナダ/英語/106分/原題:Summer of 84
(c)2017 Gunpowder & Sky, LLC
公式サイト:https://summer84.net-broadway.com/

関連記事