GKIDSが『竜とそばかすの姫』北米配給権を獲得 これでアカデミー賞ノミネートは確実?

 インディーズアニメ映画を配給することで知られる米配給会社GKIDS(ジーキッズ)が、細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』の北米での配給権をスタジオ地図から取得した。

 本作の英題は『Belle』。主人公のすずが全世界で50億人以上が集うオンライン上の仮想世界「U(ユー)」で生み出した分身、「ベル」にちなんでいる。すずは歌うことが何よりも好きだった女子高生だが、母親の死をきっかけに歌うことができなくなる。ところが自分のアバターである「ベル」としては歌えることができ、彼女は瞬く間に世界的な歌姫となる。ついに「U」で開かれる彼女の大規模なコンサートの当日、突如現れた竜によって無茶苦茶にされてしまうのだが、ベルはその竜の秘密を知ろうとする。前作『未来のミライ』同様、細田守監督のオリジナル脚本であり、スタジオ地図の共同創設者である斎藤雄一郎とともに本作をプロデュースしている。

 実は本作で日本のクリエイティブチームは、国際的な才能ある人々とコラボレーションをしている。例えば、ディズニー作品『モアナと伝説の海』や『アナと雪の女王』でキャラクターデザインを務めたジン・キムは歌姫ベルのキャラクターデザインを担当。アイルランドのアニメーションスタジオ「Cartoon Saloon(カートゥーン・サルーン)」に所属し、『ウルフウォーカー』を手がけたトム・ムーアとロス・スチュアートは本作の仮想世界「U」のアートワークをいくつも提供したという。「U」といえば、細田監督はこの世界を描ける人物としてイギリス人建築家兼デザイナーのエリック・ウォンにデザインを頼んだ。さらに、小島秀夫の『DEATH STRANDING』や『メタルギアソリッド』などでの活躍で知られるルート・ヴィヒ・フォセルが楽曲を担当する。

 さて、GKIDSはこれまで多くのインディーアニメ作品の配給を行い、その多くは小規模でありながらも大手の大規模作品を凌いでアカデミー賞にノミネートさせてきた敏腕会社としても知られている。彼らはとくに日本の作品には積極的であり、近年では新海誠の『天気の子』、山崎貴の『ルパン三世 THE FIRST』、今石洋之の『プロメア』、岩井澤健治の『音楽』の北米配給を手がけた。さらに、2012年の『ココリコ坂から』からはそれまで10年にわたってディズニーが配給していたスタジオジブリ作品の北米の配給権利を引き継いでいる。

 GKIDSは第91回アカデミー賞長編アニメーション映画賞に『未来のミライ』をノミネートさせた立役者でもある。そして何を隠そう、第93回アカデミー賞長編アニメーション映画賞ノミネート作品『ウルフウォーカー』の配給を担当したのもGKIDS。これまで日本のアニメ映画のアカデミー賞入りはジブリ作品というのが定説だったが、それを覆した点でも、その手腕が窺える。『未来のミライ』は惜しくも『スパイダーマン:スパイダーバース』に敗れてしまったが、おそらく『竜とそばかすの姫』もノミネート入りはこれで確実になるのではないだろうか。作品の内容も、世界規模の仮想世界、インターネット上でのプリテンドと誹謗中傷に、本人特定をしようとするアンべイルといった多くの人が共感できそうな国際的なテーマを扱っているため、手堅い結果が残せるかもしれない。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。InstagramTwitter

■公開情報
『竜とそばかすの姫』
7月16日(金)全国東宝系にて公開
監督・脚本・原作:細田守
企画・制作:スタジオ地図
声の出演:中村佳穂、成田凌、染谷将太、玉城ティナ、幾田りら、森川智之、津田健次郎、小山茉美、宮野真守、役所広司ほか
企画・制作:スタジオ地図
製作幹事:スタジオ地図有限責任事業組合(LLP)・日本テレビ放送網共同幹事
配給:東宝
(c)2021 スタジオ地図
公式サイト:https://ryu-to-sobakasu-no-hime.jp/
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