オマール・シーによる新世代の怪盗紳士像 “エンタメ全部乗せ”な『Lupin/ルパン』の魅力

 世界で一番有名な探偵キャラは、間違いなくアルセーヌ・ルパンだろう。ルパンはフランスの作家モーリス・ルブランが1905年に創造したキャラクターであり、今なお多くの作品に影響を与えている。特に我が国・日本では『ルパン三世』なる、そのまんまなキャラが創られているくらいだ。『名探偵コナン』の怪盗キッドだって、ルパンが雛形だろう。ある意味、我が国はルパン先進国なのかもしれない……と思っていたら、本家本元のフランスから強烈な『ルパン』作品がやってきた。Netflixの『Lupin/ルパン』である。このたびシーズン2の配信が始まったので、今回はシーズン1で確立している同作の魅力と見どころを紹介したい。

 さっそく身も蓋もない話をすると、『Lupin/ルパン』はエンターテインメントに必要な要素が揃っており、その全てが極めて高い水準を持っている。魅力的なキャラクターに、勧善懲悪の王道な脚本、常に存在するサスペンスと、「その手があったか!」と膝を打つ大胆不敵なトリック、そして思い切ったアクションに、どこを切り取っても絵になるパリの街並み……。全てが過不足なく揃っているのだ。これはリュック・ベッソンが作ったヨーロッパコープ出身のスタッフが、作品の中核にいるからだろう。

 ヨーロッパコープは決して予算は多くないが、ハッタリ全開の脚本に、とにかくスカっとする勧善懲悪映画を量産した会社だ。玉石混交の感もあったし、今は色々あって潰れかけているが、この会社は『トランスポーター』(2002年)や『96時間』(2008年)などのヒット作を世に出している。『Lupin/ルパン』には、このヨーロッパコープ組が多数参加しているのだ。特に『インクレディブル・ハルク』(2008年)や『グランド・イリュージョン』(2013年)といったハリウッド超大作でもバリバリに活動していたルイ・レテリエの存在は大きい。1話目のメガホンはレテリエが取っているが、フェラーリがルーブル美術館に突っ込むなど、エンタメに何を求められているかを完璧に把握している。そうそう、せっかくパリで撮るんだから、有名な観光名所が大変なことになってほしいんですよ。

 スタッフ陣のエンタメマインドの素晴らしさに加え、本作を魅力的にしているのが、主人公アサン・ディオプ(オマール・シー)の新世代の怪盗紳士像だ。少年時代に父親が罠にはめられて獄死してしまい、復讐のために一大犯罪計画を練る。父の遺品でもある小説『ルパン』を参考にして、変装と心理戦でターゲットを手玉に取り、とんでもない宝物を盗んでしまう……こう書くと浮世離れした復讐鬼を連想させるが、一方で妻と息子がいて、(自分が怪盗なのを内緒にしているせいで)悪化した関係を修復しようと頑張る人間くさい一面も持っている。演じるオマール・シーは10頭身くらいある抜群のスタイルの持ち主で、ただでさえカッコいいうえに、何を着ても似合うのだ。いかにも金持ちなパリッとしたスーツから、ウーバーの配達員、普通のお洒落なお父さん……何でも着こなしてしまって、さながらオマールのファッションショーである。その魅力はちょっと反則の域だろう。スタイリッシュなのに親しみやすいって、普通は両立しないっすからね。

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