風間俊介、松岡茉優らによって輝く言葉たち 肉声だからこそ得られる、坂元裕二作品の妙味

 脚本家・坂元裕二による『不帰かえらずの初恋、海老名SA』『カラシニコフ不倫海峡』『忘れえぬ 忘れえぬ』の3作品を、高橋一生×酒井若菜、千葉雄大×芳根京子、林遣都×有村架純、風間俊介×松岡茉優、福士蒼汰×小芝風花、仲野太賀×土屋太鳳ら、魅力的な俳優陣が朗読劇として展開する『坂元裕二 朗読劇2021』。本公演が東京・よみうり大手町ホールで幕を開けた。公開から3カ月が経過してもなおロングランヒットを続けている映画『花束みたいな恋をした』や、放送中の『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)など数多くの作品で観る者/聴く者の心を掴んで離さない坂元の言葉たちが、いま俳優たちの“生の声”によってさらに輝きを放っている。

『大豆田とわ子と三人の元夫』(c)カンテレ

 本公演は、よみうり大手町ホールを皮切りに、大阪・松下IMPホール、札幌・新道ホールの三会場にて開催されるもの。先述した3作品を、総勢12名の俳優が2人1組となって日替わりで上演(朗読)するのだ。いくら同じ作品であっても、読み上げる俳優によってその手触りは変わってくる。いちど足を運んでしまうと、ほかの作品、ほかの俳優の組み合わせも気になってしまう公演なのである。

 この朗読劇で坂元は、脚本だけでなく演出も担当しており、これまでにも読み手を替えては繰り返し上演してきた。今回は新作『忘れえぬ 忘れえぬ』がラインナップに加わり、出演者数も過去最多。坂元作品への、ひいては坂元という表現者に対する注目度の高さがうかがえる。

 そんな『坂元裕二 朗読劇2021』で筆者が鑑賞したのは、風間俊介と松岡茉優の組み合わせによる『カラシニコフ不倫海峡』。本作は、とあるヒミツを抱えた男女のメールのやり取りによって展開していく作品だ。物語は、妻を亡くして失意に暮れる待田健一(風間俊介)が、とあるメールを受け取るところからはじまる。彼の妻はアフリカへと地雷除去のボランティアに赴いた数カ月後、少年兵の持つ自動小銃・AK47、通称“カラシニコフ”に撃たれて死んだのだ。ところがメールの送り主である田中史子(松岡茉優)は、「あなたの妻は生きています。アフリカの地でわたしの夫と暮らしています。わたしたちは捨てられたのです」という。こうして孤独な一組の男女の交流がはじまっていくのである。

 朗読劇とは、映画やテレビドラマはもちろんのこと、通常の演劇ともまた異なるものだ。一口に「朗読劇」と言っても、その形式はさまざま。本作で舞台上にあるのは、ソファに座る俳優のみだ。私たち観客は目の前にいる俳優の声を頼りに脳内で物語を立ち上げ、そこで各キャラクターは像を結ぶことになる。観客は目を閉じてみてもいいかもしれない。

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