『コントが始まる』菅田将暉×有村架純の秀逸な反転劇 『はな恋』さえも壮大な前フリに?

 一流企業を辞めた傷心のなか出会ったマクベスが日々の生きる糧となっていた里穂子の一方、中盤ではまた視点が入れ替わり、そこでは春斗の物語が語られ始める。モノローグによる視点の反転・すれ違い劇が楽しかった『花束みたいな恋をした』でさえもが壮大な前フリになっているような、菅田と有村の視点反転劇。構成だけでなく、第1話のストーリー自体が、まさしくそうした“見え方の違いによって浮き彫りになる人生の可笑しさ”を描いていたと言ってもいいだろう。

 実は春斗と里穂子の最初の出会いは1年半前だったことが明らかになる。冒頭のコント「水のトラブル」の設定が、公園のベンチで酔っ払う里穂子にあげた水が翌朝メロンソーダに変わっていたという春斗の実体験からきたものだということも。このドラマではたわいもない日々の記憶がコント(喜劇)になるし、もはや描かれるすべての日常がコントのようでもある。

 第1話は終盤でマクベスが解散するに至るまでの話を追い始めるが、そこでも、「大事なことを、必ずラーメンを食べ終わったあとに話す」という春斗の癖が、悲しいはずの話題を笑いに染め上げる。たしかにコンビを組むときも解散を切り出すときも、ラーメンを食べ終わったあとだった。それを「10年前の伏線回収してんじゃねぇよ」と潤平は笑い泣きしながらツッコむが、もはやそれは伏線回収ではなく、まぎれもなくただそこにある“人生”ではないか。

 人生は簡単には伏線回収などされない。それほど残酷なものだ。努力が必ず報われるかはわからないし、10年後には必ず売れてるだろうと見積もった未来がその通りにいかないことなど往々にしてある。それが人生であるとして、マクベスがしようとしているのは、そのうまくいかない人生を「コント」にすることで伏線回収してみせることなのかもしれない。そんなことを、メロンソーダとラーメンの逸話が盛り込まれたコント「水のトラブル」を回顧して思うのである。第1話は各々が流す涙の話であり、メロンソーダの話であり、ラーメンの話であり、すなわち「水のトラブル」にまつわる人生の話だった。93年生まれ俳優の豪華共演も相まって、濃厚すぎる伏線回収劇に興奮が止まらない。

 「自分は疫病神である」と悲観する里穂子が見つめる先に、マクベスのどんな未来が待っているのか。単独ライブのポスターをよく見ると初回放送日と同じ「4月17日(土)」となっていて、「6月に行う次の単独ライブをもって解散する」と春斗は言っていたから、おそらく本作はその解散日までを追うドラマになるのだろう。売れれば「この10年間の苦悩をすべて伏線回収した」と言えてしまうが、そううまくいかないのが人生。でも人生をコントで伏線回収してきた彼らになら、面白い未来を期待してみたくなる。

■原航平
ライター/編集。1995年、兵庫県生まれ。Real Sound、QuickJapan、bizSPA!などの媒体
で、映画やドラマ、YouTubeの記事を執筆。Twitterブログ

■放送情報
『コントが始まる』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:菅田将暉、有村架純、仲野太賀、古川琴音、神木隆之介
脚本:金子茂樹
演出:猪股隆一、金井紘(storyboard)
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:福井雄太、松山雅則(トータルメディアコミュニケーション)
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/conpaji/
公式Twitter:@conpaji_ntv

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