笠松将、『君と世界が終わる日に』はまだ序章!? そのキャリアから見えてくるもの

 ようやく時代が笠松将に追いついたーー『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)を観ていて、そう感じないわけにはいかない。本作で彼の存在を知り、魅了されている方も少なくないのではないかと思う。そんな笠松だが、2019年には映画・ドラマに18本も出演し多方面から注目を集め、同年の「出演数ランキング」(日経エンタテインメント)の男性俳優部門にて第1位に輝いている。いまから追いかけるのは遅いのでは? いや、そんなことはない。いま/ここから彼を追いかけ、そして並走していけばいいのだ。

『君と世界が終わる日に』(c)日本テレビ

 出演最新作である『君と世界が終わる日に』での笠松は、主人公のいわば好敵手的な存在である。竹内涼真が演じる主人公と何かにつけ対立し、物語をかき回し、作品に緊張感を与える役割を担ってきた。プライムタイムにおける連続ドラマでのこのポジションは、言わずもがな大役だ。誰にでも得られるものではない。笠松の活躍を早くから追ってきた方であれば、それこそ「ようやく!」という感じだろうが、知らなかった方からすれば「彼は誰だろう?」といった反応もあったはず。しかし、笠松はこのポジションを得るに相応しいキャリアを着実に築き上げてきた。彼は単に出演作が多いというわけではないのだ。実際、笠松に演技者としての力がなければ、『君と世界が終わる日に』は観ていられないものになるだろう。笠松の演じる等々力もまた、主人公やヒロインと同様に彼自身のストーリーを展開させる存在であり、それがドラマ全体の推進力に繋がっているのだ。

『君と世界が終わる日に』(c)日本テレビ

 そんな笠松の“これまで”を、ちょっと振り返ってみたい。とはいえ彼は膨大な数の作品に出演しているため、ここでは昨年の活躍に注目するのにとどめておこう。まず笠松について語るのなら絶対に外せないのが、ラッパー・SEEDAによる同名楽曲を原案に映画化した『花と雨』だ。同作は彼にとって長編映画初主演作であり、SEEDA本人をモデルとした人物を演じラップも披露。実在するひとりの男の半生の“明と暗”、“静と動”までを体現してみせた。同作での芝居は、現時点における彼のキャリアの真骨頂である。

『花と雨』(c)2019「花と雨」製作委員会

 ……と、断言したいところだが、そう一筋縄ではいかないのが笠松将という俳優だ。次から次へと私たち観客に、さらなる驚きを彼は与え続けてくれる。佐藤玲とダブル主演を務めた『ドンテンタウン』では、贋作画家として日銭を稼ぐ若者を好演。愛嬌あふれる青年像は、曇天から差す一筋の光のような存在で、“好演”という言葉が相応しいものだった。続く『ファンファーレが鳴り響く』はスプラッター映画であり、笠松が演じたのは吃音症が原因でイジメを受ける高校生。見るもおぞましい復讐劇に出るのかと思えば、彼が実践するのは非常に抑制の効いた芝居。これは意外だった。いや、意外ではない。ふだん私たちも生活を送るうえで、感情は発散させるよりも、いかにコントロールするかの方が難しいことを知っている。怒りの感情を叫びに変えろと言われても、どのレベルまで顕在化させていいのかは難しい。それを笠松は演じるキャラクターを通して、私たちに知らしめたような気がする。出力する量の加減によって、演じる人物像はまるで変わってくるはずだ。これは『君と世界が終わる日に』の等々力役にも通じることだと思う。

『ドンテンタウン』(c)2019 osampo/MOOSIC LAB
『ファンファーレが鳴り響く』(c)「ファンファーレが鳴り響く」製作委員会

 もちろん、ドラマ作品でも快調だった。“エキストラを主役に据えたドラマ”『エ・キ・ス・ト・ラ!!!』(カンテレ)では、思いを寄せる女性がとある撮影のエキストラに参加すると知って奮起する大企業の御曹司役を妙演。そのアクの強いキャラクターには大いに笑わせられたものだ。かと思えば『いとしのニーナ』(FOD)では卑劣な行為を繰り返す不良高校生に扮し、その言動の数々に神経を逆なでさせられたものである。

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