大澤嘉工監督、JAM Project無観客ライブに感じた「20年積み重ねた仲間の存在」

 アニソン界のレジェンド、JAM Project(以下、JAM)の結成20周年を記念したドキュメンタリー映画『GET OVER -JAM Project THE MOVIE-』が、2月26日から全国で公開されている。

 本作は、2019年から2020年にかけ460日間に渡り、レコーディングやライブツアー、海外公演の模様を捉え、さらにこれまで語られることのなかったメンバーたちの本音と実像に迫る内容になっている。JAMの活動の歴史は、そのままアニソンが市民権を獲得していった時期につながる。本作は、そんな時代をいつでも先駆者として走り抜けてきたメンバーたちの真摯な姿勢と熱い想いがあふれた作品となっている。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、予定されていたツアーが次々と中止になるという事態にも見舞われたJAMだが、それでも彼らは進むことを諦めない。アニソン界を牽引してきた存在だからこその強さが浮かびあがる、貴重なドキュメンタリーだ。今回は、本作の監督を務めた大澤嘉工氏に、本作について話を聞いた。(杉本穂高)

関係性こそドキュメンタリーの真髄

――今回のお仕事を引き受けた経緯を教えて下さい。

大澤嘉工監督(以下、大澤):ドキュメンタリーは自分で企画を立てる場合と依頼される場合とありますが、今回は昔から信頼しているプロデューサーからのオファーでした。僕は特にアニソンに詳しかったわけでもありませんでしたが、今回は長い撮影期間をいただけるということだったので、むしろ関係性ゼロから始めて、その中でお互いを発見していくやり方の方が良い作品になるだろうと考えました。ドキュメンタリーは、対象との関係性をどう強くしていくかが真髄だと思っています。今回はその関係性を「はじめまして」の状態からスタートさせて、ラストカットにいたるまで、どんどん強くすることができたと思っています。

――5人のメンバーと最初にお会いした時は、どんな印象でしたか?

大澤:最初にお会いしたのは、2019年、幕張でのランティス祭りの控室でした。“この人たちはドキュメンタリーの素材として面白いぞ”という予感は最初から感じましたね。もっと言うと、5人全員が主役であるべきだと思いました。バンドなどを取り上げる場合は、なんとなくボーカリストが中心になることが多いですけど、JAM Projectについては5人全員を主役として立たせることが重要だと次第に考えていくようになりました。

――15カ月間の撮影を続けて、監督とメンバーとの関係性はどんな風に変わっていったのでしょうか?

大澤:思った以上にエッジの立った方たちだったし、そして思った以上に優しかったです。ただ、優しさの表現はそれぞれ別で、例えば遠藤(正明)さんは初めはすごく警戒されていましたが、一度信頼関係ができれば快く受け入れてくれました。奥井(雅美)さんは、バランスを取る方で、聞くべき順番を間違えなければ心を開いてくれた印象があります。

――話を聞くと言う点では、インタビューパートもありましたが、あれは撮影期間のどのタイミングで撮ったのですか?

大澤:2020年の2月です。撮影を始めたのが2019年の7月くらいでしたが、今回は5人の声が必ず重要になると思っていたので、最初からあのインタビューに向けて関係性を深めていこうと思っていました。あのインタビューをどのタイミングで撮るのかはすごく重要でしたね。

世界に広がるアニソンを目撃

――海外公演の模様も収録されています。海外でのアニソンに対する熱狂ぶりを見てどう思いましたか?

大澤:ただ熱いだけじゃなく、思った以上に(カルチャーとして)根付いているんだなと思いました。アニソンという言葉がそのまま英単語のAnisongとして通用することはすごいことですし、お客さんも海外でのライブに関わらず日本語の歌詞で歌っているわけですから。日本語のまま海外で通用するミュージシャンなんて、これまでほとんどいなかったですよね。これはJAM Projectが優れている点だと思うのですが、アニソンはやはりアニメ文化と一体のものなので、アニメがあるからこそ自分たちもアニソンを歌える。そういう想いが強いんですよね。アニメ作品へのリスペクトを、歌で表現するためにアニソンがあるんだと思っていることはすごく感じました。

――ライブ撮影でこだわった点はありますか?

大澤:ライブの場合、オフィシャルのカメラが何十台とあったので、その素材も使わせてもらいつつ、それとは別にドキュメンタリーとして欲しい画を撮るために映画の撮影スタッフも入れました。横から5人がフレームに入ってきたり出てきたりする画を撮りたかったんです。

――舞台袖にカメラを置いたということですか。

大澤:ステージの横ですね。JAMは5人みんなで一緒に動きを揃えたりはあまりしないんです。向こうを向いている遠藤さんがいれば、きただに(ひろし)さんはこっちを向いていたり、福山(芳樹)さんは遠くにいってしまっていたり、バラバラな個性なんだけど、この5人がまとまると1つの塊になる。それを象徴する画になると思ったんです。

――5人の動きがバラバラだとカメラのオペレーションも決めにくいですね。

大澤:そうなんです。だから毎回カメラマンにあれこれ指示するんですが、難しいんですよね(笑)。ある程度“こういう時はこう動くんだな”と予想はするのですが、やはりライブは生物なので。

――音響面でこだわった点はありますか?

大澤:映画館という環境を活かしたいと最初から思って撮影していました。なので、ドキュメンタリー作品では珍しいと思うのですが、7.1chの環境がある劇場では全て7.1chでの上映になります。通常、ライブは基本的にステレオのLとRの世界ですけど、映画館はサラウンドですから、音に包まれる体験をしてほしいと思いました。それに、5.1chの音源も5.1ch用にきちんと調整しましたので、それはそれですごく良い音響になっていると思います。

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