竹内涼真演じる響が背負った十字架 『君と世界が終わる日に』が示す原罪の構図

 生きるために嘘をつくことをサバイバルと呼ぶなら、たしかにその通りなのだろう。紹子にとっては結月を守るのが生きることであり、そのために嘘をつく。響にとってはどうだろうか。狛江を手にかけ、ゴーレムになったと偽ったとき、響は何を守りたかったのだろう?

 たしかに響は仲間を守ったが、そこには正義が欠けている。「何が正しくて何が正しくないのか、俺もわからなくなってる」という言葉は、自身に言い聞かせているようだった。響の良さは性善説的なキャラクターだが、それは多分に来美への思いから発している。来美との再会を諦めた時、すでに響の正義は揺らいでいた。

 響が背負った十字架は、いわゆる“闇堕ち”とは異なる。闇堕ちは心の闇が顕在化したものだが、響の場合は生きるための避けられない選択だった。本作での描き方は「生きること=罪を犯すこと」という原罪の構図に近い。来美が罪を償うために注射を打たれるのは象徴的なシーンだ。ゾンビを題材にした作品が人を惹きつけるのは、普遍的な図式がベースにあるためではないか。

 この「世界」の外縁が事実上、封鎖区域のフェンスであることもはっきりした。響たちの希望は打ち砕かれ、一行はもと来た道を引き返すことに。「俺たちはこの世界で生きていくしかない」。罪を背負い、手を血で染めた主人公たちには、さらに過酷な運命が待ち受けていることが予想される。

 話は変わって、エピローグに回想シーンを持ってくる構成は韓国ドラマを想起させる。Huluとの共同製作で、キム・ジェヒョンや玄理ら韓国語を話せるキャストの起用は海外展開を見据えたものだろう。国内初の本格的なゾンビドラマとして、海外ドラマの良い部分を取り入れながら、オリジナルな作品を目指す意欲が伝わってきた。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『君と世界が終わる日に』
Season1(全10話):日本テレビ系にて毎週日曜22:30〜放送
Season2(全6話):Huluにて、3月配信開始
出演:竹内涼真、中条あやみ、笠松将、飯豊まりえ、大谷亮平、笹野高史、マキタスポーツ、安藤玉恵、横溝菜帆、鈴之助、キム・ジェヒョン、滝藤賢一
脚本:池田奈津子
音楽:Slavomir Kowalewski A-bee
主題歌:菅田将暉「星を仰ぐ」(Sony Music Labels Inc.)
制作:福士睦、長澤一史
チーフプロデューサー:加藤正俊、茶ノ前香
プロデューサー:鈴木亜希乃、鬼頭直孝、伊藤裕史
協力プロデューサー:白石香織
演出:菅原伸太郎、中茎強、久保田充
制作協力:日テレアックスオン
製作著作:日本テレビ、HJ Holdings,Inc.
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kimiseka/
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