戸田恵梨香は本当に“悪”なのか 宮藤官九郎が『俺の家の話』に忍ばせるメッセージ

 先週の第1話では能のなかでも特に有名な演目である「羽衣」をモチーフにしたストーリーが展開した金曜ドラマ『俺の家の話』(TBS系)。1月29日に放送された第2話でモチーフに選ばれたのは、祝言の代名詞として知られている「高砂」。結婚やめでたいことを象徴させるこの演目に照らし合わされるようにして描かれるのは、寿一(長瀬智也)と元妻・ユカ(平岩紙)との関係であったり、“後妻業”と疑いをかけられるさくらの過去。いずれにしても、そこにあるテーマは、“幸せ”という極めて漠然としたもののあり方に他ならない。

 寿三郎(西田敏行)の後を継ぐことを決心した寿一であったが、門弟たちから不満の声が続出。その反発を鎮めるために、寿一は1週間後に「高砂」を彼らの前で披露することとなり、猛練習に励む。その一方で、さくらが過去に介護をしていた3人の老人から多額の遺産を得ていたことを突き止めた踊介(永山絢斗)は、そのことを寿一や舞(江口のりこ)、寿限無(桐谷健太)に報告。踊介たちはさくらに直接追及するのだが、息子の養育費を払えずにさくらから借金をした寿一は、責めるに責められない状況に悩むことになるのである。

 さくらが過去に接していた3人の老人たちは、いずれも身内から見捨てられ、さくらの献身的な介護によってたしかに生きる希望を得ていた。そしてさくらに好意を抱いたことで彼女にすべての遺産を譲り渡すことを決め、さくらも「もらえるものはもらう」というスタンスでそれを得る。いわば期せずして“後妻業”となったといったところか。そんなさくらに振られ、一時は失恋に嘆く寿三郎ではあったが、認知症のおかげか10分後にはそれを忘れていつものようにさくらに甘える。そしてさくらは翌日もきちんと介護のために訪れると、一連の事態の収拾が決して後味の悪いものにならないようにうまくまとめられているあたり、流石は宮藤官九郎のコメディドラマだ。

 しかもなかばゲストキャラクター的なポジションに見えた、寿一が所属していたプロレス団体「さんたまプロレス」の幹部・長州力役の長州力が、しっかりと良い味を出しているのは興味深い。「ウーバーイーツ」を彷彿とさせるデリバリーのバイトをはじめた寿一がジムを訪れ、戻ってこいという誘いを丁寧に断ると、長州に「ロープに投げ飛ばしてくれ」と頼み込む。リングの上で長州に「プロレスが好きか?」と訊ねられた寿一は、「大好きです」と即答。そして「大好きなことを仕事にしなくていい」ことが“幸せ”であると語るのである。

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