残酷な場面に流れる美しい旋律 日本歌謡の味わいを絡めた『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の演出

 使徒と呼ばれる謎の敵と戦うために開発された汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオン。全国の電力を集めた陽電子砲で敵を狙撃するヤシマ作戦のもと、主人公の碇シンジが操縦するエヴァンゲリオン初号機と、綾波レイが操縦するエヴァ零号機の連携で、辛くも強敵の使徒撃破に成功し、幕を下ろした『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007年、以下『序』)。

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 その2年後の2009年に公開されたのが『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(以下『破』)だ。物語の大筋は、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)の第八話から第拾九話、弐拾弐話(の一部)をベースにしているが、『序』同様に作画を新しく起こしているだけではなく、キャラクターの演技と台詞を『序』の時よりもさらに変えることで、テレビアニメ版と印象が異なる流れを見せる。本作から新キャラクターの真希波・マリ・イラストリアスが加わり、テレビアニメ版では未登場のエヴァ仮設5号機に乗って現れるなど、新劇場版の独自性がより開花した作品となっている。

 『破』でユニークなのは音楽の使い方だ。使徒に侵食されたエヴァ3号機を初号機が破壊しつくす中盤のハイライトシーンと、使徒に取りこまれた綾波レイを救うべく、初号機が神に近い存在へと変化する本作のクライマックスシーンに、それぞれ「今日の日はさようなら」と「翼をください」が挿入歌として流れた(歌唱はどちらも林原めぐみ)。また、葛城ミサトと加持リョウジが会話する居酒屋の店内音楽としてピンキーとキラーズが歌う「恋の季節」が原曲のまま流れている。マリの初登場場面では彼女が「三百六十五歩のマーチ」を歌っているといった具合に、1960年代から70年代頃にヒットした日本の歌謡曲、フォークソングが随所に使われている。

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