ニコラス・ケイジの使い方が大正解 『あなたの知らない卑語の歴史』で学べる“本当の英語”

 英語を勉強したい、という方は少なくないと思う。でなければ、昨今ありとあらゆる切り口で展開される英語のテキストブックの類が売れるはずがない。その中でも、やはり注目されているのはスラングの使い方。英語を勉強したい人の大半は英文を読むより、英語を使った会話を楽しめるようになりたいのではないだろうか。そんな時、知っておきたいのはネイティブが普段の会話に使うスラング。中でも人々の興味関心の行き着く先は、卑語(Swear Word)だ。つまり、FUCK(ファック)、SHIT(シット)、DAMN(ダム)などの単語にあたる。英語表現研究会から出版された『正しいFUCKの使い方』という書籍が人気だった記憶もあり、皆あの卑語たちが“実際は”どのようにして英語話者に受け止められ、使われているのか気になるはず。そんな方に向けて、バイリンガルの筆者的には是非ともNetflixドキュメンタリーシリーズ『あなたの知らない卑語の歴史』の鑑賞をお勧めしたい。

ニコラス・ケイジの使い方を一番理解している番組

 本シリーズが“くだらないことを真面目にやる”スタンスであることは、司会進行を務めるのがニコラス・ケイジである時点で理解できる。彼は素晴らしい俳優だ。しかし、『リービング・ラスベガス』のシリアスなケイジや、『ナショナル・トレジャー』のような家族向けのケイジだけが彼の顔ではない。そもそも彼が海外ではミーム(meme)常連のネタ扱いされている俳優であることを知っておく必要があるかもしれない。

 余談ではあるが、彼のミームが登場しはじめたのは2000年中盤あたりで、ちょうどYou Tubeのサービスが開始した頃だ。そのタイミングで、2006年にケイジが大好きすぎて自らの手でリメイクを手がけた『ウィッカーマン』が公開され、あまりのB級ネタ映画っぷり(もちろん、ゴールデンラズベリー賞にノミネート)が話題となった。その映画の中で、ケイジ演じる主人公がカゴに頭を突っ込んだ状態で、そこに蜂を入れられるシーンなどが動画内で笑える素材として使われ始める。すると、YouTubeで大受けしたためファンが彼の出演作から変顔をしているシーンなどを熱心に探し始め、ミーム化したわけだ。特に知られているのは『バンパイア・キッス』(1988年)の「You don’t say?」という台詞のときの顔芸。ちなみに筆者のお気に入りは「Nicolas Cage cage」だ。ぜひ、元気のない日に画像検索してほしい。

 話が逸れてしまったが、要するにそういう扱いを受けているケイジが、自身の立場を理解しながら一緒に面白おかしく真面目風に、視聴者を下品な言葉の世界に誘うというコンセプトが素晴らしい。Netflixをはじめとするストリーミングサービスのユーザーは若年層が圧倒的に多いだろうから、その視聴者層のツボを押さえているというわけだ。「わかっているな、製作側は……」と思いながら観進めていくと、ネタどころかケイジ抜きでもこのドキュメンタリーがすごく興味深い内容で、面白い。

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