『逃げ恥』が描いた2021年の世界への希望 改めて教えてくれた“他者と寄り添う大切さ”
あの『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)が、4年ぶりに、このコロナ禍の2021年に戻ってきた。日本中がその恋の行く末に熱狂した、星野源演じる平匡と、新垣結衣演じるみくりが、本当の夫婦になり、出産・育児に奮闘し、そして、『逃げ恥』において重要なコミニュケーションツールであった“ハグ”も危ぶまれるコロナ禍に直面した。おなじみの登場人物たちが、私たちがつい最近歩いてきた道をなぞるように、コロナ禍の様々な苦悩と向き合っていく姿を通して、視聴者は各々の1年を反芻せずにはいられなかったのではないだろうか。
海野つなみ原作、野木亜紀子脚本、金子文紀演出による『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』は、約2時間半という限られた時間において、これでもかと言うほど現代における社会問題を詰め込んだドラマだった。選択的夫婦別姓、育児休暇所得問題、共働き世帯の家事・育児の分担問題といった様々な問題が、平匡・みくりに次々と降りかかっていく。夫婦は、その一つ一つの問題を、新居になっても変わらない、ダイニングテーブルで向かい合い話し合うことで、2人にとっての最適解を見つけ出していった。
そこには、多くの夫婦、またはこれから夫婦になっていこうとする人々がぶつかるだろう様々な現代社会における「違和感」が描かれていて、彼らのそれらに対する真摯な向き合い方は、多くの視聴者にとって、考えるためのヒントとなったのではないだろうか。
韓国で一大ムーブメントを引き起こした書籍『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)には、制度が変わり整っても、規則や習慣は大きく変わらない社会のことが描かれていた。日本は、選択的夫婦別姓問題がまさかの『ねほりんぱほりん』(NHK)とのコラボで描かれたように、制度さえ整っていない部分もあるが、平匡がぶつかる男性の育児休暇所得を巡る、上司・灰原(青木崇高)の抵抗はまさにそれであった。
また、テレビドラマにおいて活気的とも言える無痛分娩という選択肢の呈示が「逃げるは恥だが役に立つ」というタイトルと絡めて描かれるというのもまた興味深かった。平匡が語る「後に続く人のためにも道を作る」ための「普通のアップデート」こそが、このドラマが目指したところなのではないだろうか。