舞台で鍛えられてきた気鋭の若手が朝ドラに大抜擢 東野絢香が『おちょやん』で示すポテンシャル

 いずれの作品でも東野が演じたのは、どこか浮世離れした、掴みどころのない少女の役(『獣の柱』では二役を演じ、そのうちの一つが“新人類”という役であった)。高身長である彼女は舞台上でも映え、長い手足はちょっとした動作においても目を引いた。演じる役柄が特徴的だったというのもあるが、演者本人の資質と役の特性が有機的にはたらくと、それはやはり大きな強みになる。そんな“ハマり役”を演じる東野という俳優の存在が、強烈に印象に残っていたのだ。

 しかしだ、『おちょやん』で演じているのは、平凡といえば平凡なキャラクター。『獣の柱』の新人類や、『掬う』で演じた謎めいた女子高生役とはまったく違う。そしてそんなみつえというキャラクターを、東野はあっさりと演じている。個性を前面に押し出すようなタイプの俳優だと思っていただけに、これは意外。舞台上に立つ彼女から受けた衝撃は大きかったが、テレビ越しにも衝撃を与えられることとなったのだ。東野の『おちょやん』出演は、筆者にとって大きな驚きとともに、嬉しくもある。劇場へ行かなければ会えない存在だと思っていたからだ。映像作品での活躍も増えることと思うが、舞台上の東野絢香も多くの方に知ってもらいたい。ちなみに『獣の柱』の本編映像は、イキウメの公式サイトで現在公開中である。

イキウメ「獣の柱」(2019年)

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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