最終話で明らかになったテーマとは? 『先生を消す方程式。』は前例のないドラマに

「義澤くん、今日から君は僕の生徒だ」

 ドラマの既成概念を覆す意欲的なチャレンジが幕を閉じた。『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)最終話では、ジェットコースターのような展開が想像のはるか上を行く結末を呼び込んだ(※以下ネタバレあり)

 静(松本まりか)を人質に取った朝日(山田裕貴)は、義経(田中圭)や刀矢(高橋文哉)たちの前で静を殺そうとした理由を話し出す。「先生を消す」一連の事件の発端には、自らが犯した過ちを消そうとする朝日の魂胆があった。

 朝日と対峙する義経。二転三転する攻防は方程式対決の様相を帯びる。最初に朝日が繰り出したのは「勇気―正気=恐怖」。静を手にかけることでいじめられっ子の立場を逆転した朝日は、それ以降、恐怖によって他人を支配するようになった。これに義経は「人生×愛すること=地獄」の方程式で対抗する。

 「人を好きになることと愛することは似ているようで違います」。義経最後の授業は愛がテーマ。愛することで人生は彩りを増す。その反面「自分が愛しているのに、その愛を向けられないことは地獄だ」。どれだけ愛してもその愛が届かない孤独は、義経が背負ってきたもの。しかし、義経はその愛を生徒たちに向けた。「目の前に愛すべき人たちがもっともっといる」。それを教えてくれたのも静だった。義経は生徒たちに「君たちに会えて幸せだ。愛してる」と語りかける。

 最終話で明らかになった本作のテーマ「愛」。意外なほどシンプルで奇をてらわないメッセージは、教え育むという行為が究極的に愛でしかないこと、『先生を消す方程式。』がまぎれもない学園ドラマであることを伝えていた。一方、朝日のように愛情が通じない相手もいる。朝日のような人間が孤独のうちに死んでいくしかないのなら、それは教育の敗北ではないのだろうか? 「絶対的な悪に対して教育は何ができるか」という問題提起もはらんでいた。

 鈴木おさむについて言えば、センセーショナルな言辞で耳目を引き付ける言葉の貫通力ともいうべき資質は、ドラマ本編・スピンオフを通じてまんべんなく発揮されていた。『会社は学校じゃねぇんだよ』(AbemaTV)などで示した既存の常識に一石を投じる姿から、鈴木は「モラルの破壊者」として見られがちだ。しかし、根底には普遍的なメッセージがある。不倫をテーマにしたドラマがラブストーリーを再定義するように、「先生を消す」という劇薬を投じることで教育の本質をえぐり出した。

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