『せんけす』の鈴木おさむ、『共演NG』の秋元康 “放送作家としての構成”が話題の要因?

放送作家としての構成

 秋元も近年はテレビドラマの仕事が増えており、事件の謎解きを誘発して考察ブームを巻き起こした『あなたの番です』(日本テレビ系)のヒットが記憶に新しい。鈴木おさむは脚本、秋元康は企画、原作という役割の違いこそあるが、作品に対する立ち位置はおそらく同じだろう。それは放送作家としての構成である。

 放送作家とは名前のとおり、ラジオやテレビといった放送番組の「構成」を担当する作家のことだ。

 青島幸男、永六輔、高田文夫、現在は俳優としてのイメージが強いリリー・フランキーなど、放送作家出身の作家やタレントは時代ごとに存在する。彼らはジャンルを超えて多方面で活躍しており、日本の映像文化は放送作家が作ってきたと言っても過言ではないだろう。そんな放送作家の活動拠点と言うと、バラエティ番組のイメージがとても強い。しかし近年は、放送作家としても活躍していた宮藤官九郎や福田雄一のような、バラエティ番組とテレビドラマの両方に軸足を置く脚本家も多い。日本のドラマ脚本家の代表と言える向田邦子も、『時間ですよ』(TBS系)や『寺内貫太郎一家』(TBS系)といったバラエティ色の強いホームドラマを演出家の久世光彦と共に多数手掛けている。

『共演NG』(c)テレビ東京

 元々、スタジオで撮影するコントバラエティとテレビドラマの境界は、とても曖昧なところがある。だからこそ秋元康と鈴木おさむを受け入れる懐の広さが、テレビドラマにはあるのだが、おそらく二人はテレビドラマを“物語”ではなく、俳優やドラマスタッフが自由に力を発揮し、そこに視聴者が参加して楽しむことができる“番組”として構成しているのだろう。

 これが他の脚本家と、放送作家出身の脚本家の大きな違いではないかと思う。特に秋元康の場合は、自身のクレジットを原作・企画としていることからも明らかなように、あくまで番組の仕掛け人として作品に関わっている。

 そんなバラエティ色の強い鈴木おさむと秋元康のドラマは、ドラマファンからは批判的に語られることが多いのだが、実は問題は企画という器ではなく、それをどう料理するかという演出に対する反発ではないかと思う。

『先生を消す方程式。』(c)テレビ朝日

 『せんけす』は、バラエティ的な楽しさがSNSでウケているのはわかるのだが、あえてチープに作られている映像や演出に、ドラマとしては物足りなさを感じる。

 対して『共演NG』は、深夜ドラマ『モテキ』(テレビ東京系)などで知られる大根仁が脚本(樋口卓治と共同クレジット)と演出を担当することで見応えのある映像に仕上がっている。本作の最大の成功要因は秋元✕大根という座組だろう。『共演NG』のように優れた企画を、力のある映像作家が手掛ける事例が増えていけば、ドラマの世界はより豊かになるはずだ。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『先生を消す方程式。』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:田中圭、山田裕貴、高橋文哉、久保田紗友、森田想、高橋侃、秋谷郁甫、奥山かずさ、榊原有那、川瀬莉子、田中亨、松本まりか
脚本:鈴木おさむ
音楽:HAL
監督:小松隆志ほか
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:秋山貴人(テレビ朝日)、遠田孝一(MMJ)、小路美智子(MMJ)
制作:テレビ朝日/MMJ
(c)テレビ朝日
公式Twitter: https://twitter.com/senkesu5
公式Instagram: https://www.instagram.com/senkesu5/

『共演NG』
テレビ東京系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:中井貴一、鈴木京香、山口紗弥加、猫背椿、斎藤工、リリー・フランキー、里見浩太朗、堀部圭亮、細田善彦、小澤廉、若月佑美、小野花梨、小野塚勇人、森永悠希、小島藤子、岡部たかし、迫田孝也、岩谷健司、瀧内公美、橋本じゅん
企画・原作:秋元康
監督:大根仁
脚本:大根仁、樋口卓治
プロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)、祖父江里奈(テレビ東京)、合田知弘(テレビ東京)、浅野澄美(FCC)
制作:テレビ東京/FCC
製作著作:「共演NG」製作委員会
(c)「共演NG」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kyouen_ng/
公式Twitter:@kyouenNG_tx
  

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